「そのままの自分でいい」ではダメな理由
だからといって、「そのままの自分でいいんだよ」というようなアプローチは問題ありと言わざるを得ない。
それは、頑張りすぎたり、傷つきすぎたりした子に、「張りつめた気持ちを少し緩めるといいよ」「そこまで自分を責める必要はないよ」と伝えるときに用いるメッセージである。
通常は、頑張ろうという気持ちや悪いことをした自分を責める気持ちがなければ困る。
そこを勘違いした似非心のケア的アプローチがとられるから、「頑張れない心」「反省できない心」が生みだされてしまう。
大事なのは、もっとマシな自分になりたいという気持ちに目を向けることである。そして、成果にはなかなかつながらなくても頑張っている自分、短所だらけで未熟だけど一所懸命に生きている自分、そんな自分を受け入れることである。自己受容が進むと自己肯定感も高まる。また、自己受容が進むと他者受容も進み、人間関係が良好になる。それによってさらに自己肯定感が高まっていく。
自己肯定感が高いひとの「失敗」の受け止め方
③楽観的なものの見方を身につける
何かにつけて物事を悲観的に受け止める心理傾向をもつ子がいる。
授業中に先生に指名されたとき、ボーッとしていてうまく答えられないと、ひどく落ち込む。友だちから嫌なことを言われると、「きっと嫌われてるんだ」と思い、落ち込む。試験で悪い点を取ると、「自分は頭が悪いんだ」と自己嫌悪に陥り、落ち込む。
このように悲観的な心理傾向をもつ子どもは、なかなか自己を肯定することができない。何か失敗したり、嫌なことがあったりすると、「自分はダメだ」「どうせ自分は(嫌われている、頭が悪い)」などと自己否定してしまう。
ポジティブ心理学を提唱したセリグマンによれば、楽観的なものの見方をする人は、悲観的なものの見方をする人よりも、勉強や仕事の成績がよく、鬱になりにくく、感染症などの病気になりにくく(心理的要因により免疫力が高いため)、寿命も長い。
それは素晴らしい発見だが、楽観的なものの見方は、自己肯定感を育むためにも必須の要素といえる。
先の例で言えば、楽観的な子なら、授業中に先生から指名されてうまく答えられないときなど、「ちゃんと聴くようにしなくちゃ」と反省はしても、とくに落ち込まない。
友だちから嫌なことを言われても、「なんか感じ悪いな、虫の居所が悪いのかな」と思うくらいで、嫌われているとまでは思わないため、落ち込むこともない。
試験で悪い点を取ったときなど、「これじゃダメだな。もっと勉強しなくちゃ」と反省し、つぎはもっと頑張ろうと思いはしても、自己嫌悪で落ち込むようなことにはならない。


