子どもは大人が用意した“箱”でたくましく成長していく

――実際に1年間取材をされた中で、日本式の教育で子どもたちは成長していると感じましたか。

【山崎】そうですね。子どもたちって大人が決めた“箱”、教室や学校という箱の中ですくすくと育っていくと思うんです。だからこそ、先生たちだけではなく、教育のことを決める私たちにも責任があることを感じます。映画で映し出したように、コロナ禍でどうなるかわからない状況でも、子どもは成長していけるんですね。だからこそ大人たちが用意する箱の中身が大事で、社会全体が自分ごととして未来のことを考えていけたらいいなと思います。

ドキュメンタリー監督としてのやりがいと今後のビジョン

――ドキュメンタリーだから描けるもの、伝えられるものをどうとらえていますか。

【山崎】日本におけるドキュメンタリーの定義は、海外から見るとまだまだ狭い。でも、逆にまだまだ可能性があると思っています。実際に存在している人たち、存在している環境を使わせてもらって何かを表現するんですけど、単なる記録ではなく、そこに何百、何千時間もいたから感じ取れたものを自分なりに凝縮した真実として届ける。そのために自分の人生の莫大な時間をかけ、持てる限りの責任感と能力を注いでやる。だからこそフィクションでは絶対撮れないような言葉や表情、人の姿が撮れる。それがドキュメンタリーで、そのストーリーに「。」(マル)はつかないし、観た人が自分もその場にいるかのような体験ができる。映像と音だけで勝負することに大きな魅力を感じています。今回、ドキュメンタリーを観たことがないという皆さんが劇場で観て下さっているのもうれしいです。

――今後の抱負を聞かせてください。

【山崎】欧米ではこの10年、15年の間にドキュメンタリーのエンターテインメント性や映像のクオリティが爆発的に進化しています。そうした中で勉強してきたことを活かしながら、日本のことを日本の中から外に発信していきたい。私は趣味も職業も全部ドキュメンタリーで、1日24時間ドキュメンタリーのことを考えているので(笑)、より良い作品を追求しながら、次の作品にも向き合っていきたいなと思っています。

cJyvaskyla with Outi フィンランドでの上映会の様子
©Jyvaskyla with Outi フィンランドでの上映会の様子