スポーツ教室では“無駄な動き”ができない
どういうことかというと、昔の子どもは野山を駆け巡り、鬼ごっこをし、舗装されていないでこぼこの道を走り、大人からすると少々危険な遊びもたくさんして、全身をくまなく動かしていました。私(本間)も放課後、意味もなく自転車に乗ってウロウロ走り回っているような子どもでした(笑)。
それに比べて現代の子どもは外で遊んでいません。公園で子どもが遊ぶ姿を見ることも少なくなり、遊具は危険とされて取り除かれることも多くなりました。放課後は塾や習い事で忙しく、遊びといえば座ってゲームです。
このようにお伝えすると、「いえ、うちの子は運動をたくさんしています」「小さいときからサッカーをしています」「ダンス教室に通っています」などとおっしゃる親御さんもいるでしょう。実は、それも「無駄な動きをしていない」ことになるのです。
もちろん、運動やスポーツを否定しているわけではありませんが、意味もなく走ったり、鉄棒でぐるぐる回転し続けたり、毎日いろいろな場所で遊び回っていた昔と違い、きちんとプログラムが組まれ、決まった練習をして、ある程度決まった動きをする運動やスポーツ教室に通っていることが、無駄な動きをさせなくしているのです。これも、原始反射の統合を阻んでいる理由の1つになっているといったら、驚かれるでしょうか。
「安心できる場所」が減ったことも一因
無駄な動きの中にこそ、原始反射を統合する要素がたくさんあったのに、いまは残念ながらその機会がぐっと減ってしまっているのです。たとえば、私のクリニックの診察室に入った子どもたちは、椅子に座るとまず、くるくる回って遊びます。よく回る椅子が面白いのでしょう。これも原始反射の統合の1つです。それさえ「じっとしていなさい」と叱られてしまったらできません。
そしてもう1つ、原始反射が残りやすくなっている理由があります。それは「安心できる場所」が少なくなってしまったことです。いま、唯一の安心できる場所は「家庭」といえるかもしれませんが、昔は街も安心できる場所でした。近所に知っているおじさん、おばさんがいて、どこで何をしても安心な空間があったのに、いまはどこに行っても「危ない」「遊ぶな」「犯罪に巻き込まれる」などの理由で、安心することができません。
恐怖や不安、緊張感がある環境で、原始反射は出やすくなります。なお、本書では原始反射が「消失する」「消える」「なくなる」などの表現を用いますが、厳密には、原始反射は「統合する」というのが正しい表現になります。
というのは、原始反射は完全になくなってしまうということがないからです。命を守る危機的な状況になったときはもちろん、体調が悪いとき、ストレスが重なったときなどは、大人でも、統合したはずの原始反射が出てくることがあります。



