「変人」が多いといわれる京都大学出身者の実態とはどのようなものか。新著『京大思考』(宝島社新書)を書いた神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「『ミス京大』をめぐる炎上は、京大のカラーを象徴している」という。学歴研究家の「じゅそうけん」こと伊藤滉一郎さんと語り合った――。
2020年2月3日、京都大学東京オフィス
写真提供=日刊工業新聞/共同通信イメージズ
2020年2月3日、京都大学東京オフィス

東京一極集中が加速しても「京大ブランド」は健在

【鈴木洋仁(以下鈴木)】じゅそうけんさんは早稲田大学出身ですよね。私の義理の父も早稲田出身なんですが、京大の校風に「シンパシー」を抱いている人が多いように感じます。

一方で京大出身者からすると、そもそも他の大学が目に入らない。偉そうに聞こえますが、本当に社会性がないから「半径5メートルの世界」で完結しちゃっている。わが家もそうですけど、京大同士の結婚も多いんですよ。

【じゅそうけん・伊藤滉一郎(以下じゅそうけん)】関東は国公立も私立もたくさんの同偏差値帯の大学があるわけですが、関西で京大は頭一つ抜けている。国立でも「京都大>大阪大>神戸大」の序列がはっきりしているように感じます。

【鈴木】私の京大の同級生がいま大阪大学の准教授をしてるんですけど、学生が「序列」を意識しているのをめちゃくちゃ感じるそうです。

ちょっとでも京大の時の思い出話をしようものなら、すごい嫌がるそうです。「先生はいいよね」みたいな。

【じゅそうけん】たしかに、京大には他の旧帝国大学とは別格のブランド力があると思っています。東京一極集中が加速する中でもなお、「東大京大」と並び称されている。東大に準ずるのは一橋でも東京科学大(旧・東京工業大)でもなく京大だといまだに言われているじゃないですか。

しかも都内からもかなりの人数が進学するんですよ。都立国立高校や都立西高校などは特に多く、例年20人ぐらい京大に進学します。

よくも悪くも「自意識過剰」な人たち

【鈴木】京都大学という大学自体のブランド力も大きいですが、京都という土地への憧れも東京からの進学者にとってはすごく大きいと思います。

あとは、17、8歳の時点で地元や東京ではなく、あえて京都に行くという判断をする。つまり、よくも悪くも自意識が過剰なのかもしれません。入る時点ではですが。

でも、入っちゃうと別に自分って特別じゃないんだっていう、ある種、去勢されていく感覚があるんですよ。

周りがみんな変わっているから、「変わっている」と指摘するほうが恥ずかしくて、あまり言わなくなってします。そして、どんどん社会性を失っていくという……。

みんな自分のことにしか関心がないから、同級生の就職先とかも本当に知らないんですよね。