AO入試は「三つのタイプ」の学生をうまく混ぜる

ヨーロッパの入試もそうした傾向になりつつある。

たとえばドイツでは、高校卒業資格があれば、基本的にどこの大学でも行けることが前提になっている。医学部がある大学では、倍率が高いところもあるかもしれないが、どこの大学にも行ける。

アメリカは、SAT(Scholastic Assessment Test)という共通試験をこれまで続けてきたが、直近のトレンドでは、カナダ同様に、それさえもやらなくなってきている。つまりSATのスコアは参照しないという大学が増えてきているのだ。

その代わりに増えてきているのが、アドミッションオフィス入試。つまりAO入試である。AO入試になると、その家庭の経済格差が反映されやすいとか、社会的なリソースの影響を受けやすいといった議論があるのだが、少なくとも、ペーパーテストの点数だけで合否を判断するより、多様な人が大学に入ってきやすくなることは明らかだ。

その結果、いろいろな学生がバランスよくクラスを構成することになる。

大別すると……、

・マーク・ザッカーバーグみたいな「オタク枠」
・イーロン・マスク、スティーブ・ジョブズのようなオラオラ、イケイケの野心的な「マイルドヤンキー枠」
・実家がすごく経済力があるという「レガシー枠」

これら三つをうまく混ぜるのだ。

「卒業生がいかに実社会で活躍するか」で評価が決まる

なぜならMeta社は、旧Facebookの時代から、そうした多様な人材の融合の中から生まれてきたからだ。また、Appleも、スティーブ・ジョブズに、スティーブ・ウォズニアックという超オタクがいたからこそ、うまくいったわけだ。ウォズニアックだけでも、ジョブズだけでも、Appleみたいなビジョンは生み出せなかっただろう。

スティーブ・ウォズニアック
スティーブ・ウォズニアック(写真=Gage Skidmore/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

アメリカの大学の評価は、卒業生がいかに実社会で活躍するかで決まる。入試の偏差値や難易度で決まる日本とはまるで違う。

卒業生がどれくらい稼いで、ビジネスでどれだけ活躍して、そして寄付してくれるかを重視する。

だから、活躍している卒業生がどのようにして成功をおさめたかを分析しているはずだ。だから、いろんな人材の最適ミックスを意識しているのだろう。多様な人材の組み合わせが新しいものを生むことを、大学はよく知っているのだ。

日本の大学に喩えると、東京工業大学(東京科学大学:2024年10月1日、東京医科歯科大学と統合し、設立)のようなオタク系大学生と、マイルドヤンキー色が強い慶應義塾大学の学生が合体したような人材を、同じ大学で採用するのだ。日本では、この二つの大学が合体したり、交流をもったりすることはないと思うが。

アメリカの大学では、大学という“クラブ”に誰を入れるのかについては、そのクラブ、たとえば大学院や学部のマネージャーの特権である。それに対して日本の多くの大学は教授会が力を持ちすぎているために、面接にも教授陣がお出ましになるケースが多い。