激化した皇太子夫妻へのバッシング
皇室という特殊な環境であるがゆえに、雅子さまへの「お世継ぎ」へのプレッシャーは相当なものであっただろう。事実、愛子さまを出産されたあと、雅子さまは2004年に適応障害の診断を受けて療養に入られた。この時期は「雅子さまは皇室から出ていきたいのだろうから、離婚して出て行かれるのがよい」「離婚しないならば、廃太子すべきだ」といったバッシングもまた激しかった。しかし、皇太子夫妻はなにも反論されずに耐えていらっしゃった。
こうした皇太子夫妻の姿を皆が覚えているがゆえに、国民は、ついつい秋篠宮家にも、同じように「反論せず静かに耐える」といったことを求めてしまうのではないだろうか。
皇室と国民の関係性
皇室の方々は、衣食住は保障され、高い身分をもたれている。しかしその一方、「自由」という代償を払い、国と国民のために奉仕することも求められている。ある意味でお気の毒ですらある。誤解を恐れずに言えば、こうした状況を「うらやましい」と思う国民は、どれくらいいるだろうかと思うほどだ。象徴天皇制とは、このような天皇陛下の状況を国民が理解しながら、だからこそ天皇陛下を敬愛するというシステムであるとさえいえる。
しかしながら、自由で闊達なところを愛された次男の秋篠宮さまは、皇嗣になっても、悠仁さまが将来天皇に即位して天皇家となっても、かつての自由闊達さを手放さずにいようとしているように、国民の目に映ってしまっているのではないだろうか。
お茶の水女子大学で研究活動を行っていた紀子さまの研究者枠を使っての悠仁さまのお茶の水女子大学附属幼稚園の入園も、同中学校の提携校進学制度を使用しての筑波大学附属高校への進学も、東大の推薦枠の使用も、今回悠仁さまが合格した筑波大の自己推薦型のAC入試も、バッシングされているような「裏口」ではなく、制度にのっとった正当なルートである。しかし、誰にでも簡単に利用できる制度ではないからこそ、本当はそうでないとしても、国民の目にはどうしても、「特別扱い」を受けようとしているかのように映ってしまうのかもしれない。
皇室の方々に無私の心を求めるのは国民の勝手であるし、皇嗣になったのは秋篠宮さま本人が望んだことでもないだろう。ご本人からすれば、不当ないじめを受けているように感じるのも無理のないことだろうと思う。ひょっとしたら私たち国民が、象徴天皇制に期待するものを変えてゆくしかないのかもしれない。
1968年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。東京外国語大学外国語学部准教授、コロンビア大学の客員研究員などを経て、武蔵大学社会学部教授。専門は現代社会学。家族、ジェンダー、セクシュアリティ、格差、サブカルチャーなど対象は多岐にわたる。著作は『日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか』、『女性学/男性学』、共著に『ジェンダー論をつかむ』など多数。ヤフー個人