日本には本来のマーケティング組織が存在していない?

日本にはマーケティング組織が「存在していない」、とは言い過ぎかもしれないが、筆者から見れば極めて少ない。多くの企業に存在しているマーケティング組織は、例えばカタログや発売通知など様々な販促ツールをつくっていたり、イベントを企画したりと、販売促進のみを行っている場合が多い。勿論もちろん、販売促進もプロモーションというマーケティングの重要な要素であるが、「マーケティング=販売促進」ではない。

マーケティングの要素として、確かに販売促進は重要だが、それだけでマーケティングは成立しない。経営学者のドラッカーはマーケティングの理想を「販売を不必要にすること」とし、マーケティングの目的は「顧客についての十分なる理解」であり、「顧客に製品やサービスを合わせ自然に売れるようにすること」と述べている。

アメリカのマーケティング学者、エドモンド・ジェローム・マッカーシーはマーケティングの要素を「プロダクト(製品)、プライス(価格)、プロモーション(販売促進)、プレース(場所)」の「4P」とした。マーケティングの大家、フィリップ・コトラーは、そこに「ピープル(人)、プロセス、フィジカルエビデンス(品質保証などの物的証拠)」の3つを加えた7Pを提唱している。

販売促進はマーケティングの一部でしかないのに…

先人たちの言葉を筆者なりにまとめれば、マーケティングとは「市場を開発すること」であり、顧客を十分に理解したうえで、「顧客のもとめるものを提供」し、それらが「自然に売れる仕組みを構築すること」である。販売促進はマーケティングの一部でしかない。

翻って日本のマーケティング部門を見ると、やっていることは「製品の販売促進」が中心で、求められる機能とは程遠いだろう。顧客のニーズに対する理解も、過去から販売されている製品やサービスを通じた理解が多く、自社を取り巻く大きな市場環境の変化や、そこから考えられる顧客の潜在的需要などにまで、理解が及んでいないことも多い。

餃子の具材
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