「自分は長生きしないから」というが、60歳からの平均余命は?

最後に参考までに、日本人の60歳からの平均余命と年金繰り上げの損益分岐点の関係について述べてみよう。

図表4を見てほしい。

平均寿命とは0歳時点の平均寿命、すなわち、0歳の人が今後平均で何年生きることができるかの指標である。平均寿命と60歳になった人が平均で何歳まで生きられるか(60歳+60歳からの平均余命)を比べると後者の方が男性で2年強、女性で2年弱長いことがわかる。それは不幸にして60歳未満で亡くなった人を含んでいないからだ。

一方、65歳から60歳まで年金繰り上げをした場合の損益分岐点は男女とも80.8歳である。

損益分岐点と比較すると、60歳になった人は男性で約3年、女性で約8年長く生きる。個人の寿命を平均値でみることは、必ずしも正しくないが、平均余命から見ても、年金繰り上げは得ではないということは、頭の中に入れておいた方がいいだろう。

【図表4】日本人の平均余命と年金繰上げの損益分岐
浦上 登(うらかみ・のぼる)
コンサルタント

早稲田大学政治経済学部を卒業後、三菱重工業に入社、海外向け発電プラントの仕事に携わる。ベネズエラ駐在、米国ロサンゼルス営業所長などを歴任後、三菱重工グループの保険代理店に移り、取締役東京支店長。2009年にはファイナンシャル・プランナーの上位資格CFPを取得。2017年にサマーアロー・コンサルティングを設立、著書に『70歳現役FPが教える 60歳からの「働き方」と「お金」の正解』(PHP研究所)がある。