「女が外に出たら何をしでかすかわからない」

女性の影がなさそうな人だからと思って結婚した部分はあるものの、まさかここまでとは……。あっけに取られているA子さんに、夫は「女が外に出たら何をしでかすかわからない。家から出るな」と怒鳴り、「仕事を取るのか離婚するのかどちらか選べ、お前は娘を捨てようとしているんだから親権は俺がもらう」とめちゃくちゃなことを言いました。

そこまで大ごとになると思わなかったため、A子さんは慌てて謝り、復職はしないと約束しました。

しかし次の日から、夫はA子さんを厳しく監視するようになりました。

夫が仕事に行っている間は、2時間おきにLINEが送られてきます。家にいる時は、リビングにあるデジタル時計の日付と時間を写して、家にいること、娘と一緒にいることを証明しなければいけません。外出は必ず事前に夫に許可を取り、買い物に行っている時も、友人と会っている時も、電話がかかってきて男性がいないかを確認されます。そして夫が帰宅したらスマホの中身をチェックされます。

A子さんはこれまで不倫をしたことはもちろん、不倫をしたいと思ったことすらありません。とても不本意でしたが、夫が「言うことを聞かないと不倫の意思があるとみなして離婚する」と言うので、仕方なく従うしかありませんでした。

監視、束縛しようとする夫に疲弊

こんな毎日が続き、A子さんは精神的に疲弊していきました。

許されるのは家にいて家事をすることだけで、買い物帰りに娘とちょっとファミレスに寄ること、ママ友と会って立ち話をすることすら、夫に知られると猛烈に怒られるのです。夫は「俺はスマホに詳しいから、お前のスマホの中身は全部見られる。浮気しようとしても無駄だからな」と言うので、インターネットで何かを検索することも怖くなりました。

復職の件から1年ほどが過ぎた頃、A子さんは毎日動悸がするようになったため、夫と離れようと娘を連れて実家に帰りました。夫が「スマホの中身は全部、外から見ることができる」と言っていたので、スマホの電源は切ったまま実家に行き、母親に相談の予約の電話をしてもらい、私の法律事務所に相談にいらっしゃいました。

鳥かごから空に飛び立つ小鳥
写真=iStock.com/imacoconut
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