男女の収入差がある社会で、相手に稼ぎを求めるのは当然
【権丈】男女の収入差があり、男性の魅力の一つとして稼ぎが重要だと判断しますので、そうした点があるのは不思議ではないと思います。
先ほどの繰り返しになりますが、周囲に祝福されて結婚したいと思うのは自然な感情ですから、昭和の残像を色濃く残す親の意見を感じたときは難しいですね。といってもやはり、自分の人生は、自分で考えて決めることを大事にしてほしいと思います。先に、ゴールディンさんやヒラリー・クリントンさんの話をしましたが、彼女たちは、前の世代のようになりたくないという自立心を持って、自分の人生を若いときから準備してきました。『サピエンス全史』では、20万年以上続くホモサピエンスの歴史の中では性差別が一般的であったことが延々と述べられています。私たちが今、目の前で観察している現象は、極めて特異な歴史の屈折点にあるといえますね。
私たちの時代もそうでしたが、20歳の頃と40歳、60歳の頃とは、何を正しいとするかの規範も異なる別世界を生きることになります。前の世代との意識の距離も生まれ、その時その時の選択が難しい、少々過酷な時代でもあります。
20歳の頃に目の前の状況に最適な選択が、時代の変化の中で時代遅れになり、人生を後悔しなくてもすむように、自分で考えていく。それが今、一番大切なことだと思います。そして私たちは、政策的に、そうした生き方を社会からサポートしていく。それも大切なことですね。
海老原さんのご著書を多くの人が手に取って、自らの人生設計のあり方、そして社会のあり方を考えてもらえればと思います。どうもありがとうございました。
構成=海老原嗣生、荻野進介
慶應義塾大学商学部卒業、慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学、アムステルダム大学Ph.D(経済学)。アムステルダム大学研究員、亜細亜大学准教授を経て、現在、亜細亜大学理事・経済学部長・教授。公務:仕事と生活の調和推進官民トップ会議構成員、同評価部会部会長、労働政策審議会雇用環境・均等分科会、同労働条件分科会、社会保障審議会児童部会等の委員を歴任。現在は財政制度等審議会財政制度分科会、中央最低賃金審議会等の委員。著書:『ちょっと気になる「働き方」の話』(2019)、『もっと気になる社会保障』(2022、共著)、Balancing Work and Family Life in Japan and Four European Countries(2004)。
1964年生まれ。大手メーカーを経て、リクルート人材センター(現リクルートエージェント)入社。広告制作、新規事業企画、人事制度設計などに携わった後、リクルートワークス研究所へ出向、「Works」編集長に。専門は、人材マネジメント、経営マネジメント論など。2008年に、HRコンサルティング会社、ニッチモを立ち上げ、 代表取締役に就任。リクルートエージェント社フェローとして、同社発行の人事・経営誌「HRmics」の編集長を務める。週刊「モーニング」(講談社)に連載され、ドラマ化もされた(テレビ朝日系)漫画、『エンゼルバンク』の“カリスマ転職代理人、海老沢康生”のモデル。ヒューマネージ顧問。著書に『雇用の常識「本当に見えるウソ」』、『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』(ともにプレジデント社)、『学歴の耐えられない軽さ』『課長になったらクビにはならない』(ともに朝日新聞出版)、『「若者はかわいそう」論のウソ』(扶桑社新書)などがある。