東京一極集中は悪いことではない
【パックン】そうだね。搾取される時代になった。
【エミン】そう。スタート地点を少し前に持っていく意味では、学費の無償化などの政策を増やす必要はあると思う。
――その意味では日本の中でも東京都は頑張っていると思いますか。
【エミン】東京都は頑張っていると思いますよ。ただ、東京都は人口が多いから、さまざまな政策を実行しやすい面もあるよね。
【パックン】東京都自体がお金持ちですからね。東京都の恩恵を受けるためには東京都に住まなければなりませんが、一極集中は必ずしも悪くないと思う。過疎化して救済できない地域はどこか見切りをつけないとダメじゃないかな。
その上で苦労している皆さんをできるだけ助けて、最終的に元気な中間層が分厚い日本の特徴を継続させたいですね。そのためにはエミンさんがおっしゃるように教育の無償化を進めたり、皆保険や皆年金は本当にいい制度ですから維持してほしい。
しかし、不思議ですね。エミンさんがおっしゃる通り、昔はお父さんが働いているだけでも子どもを5人育てられたのに、いまは共働きでも子ども1人で苦しい。どういうことだと思いますよね。
人間はちょっと毛が少ないサル。能力の限界に達している
――夫婦共働きで時間もなくなっていますね。
【パックン】この50年ほどでパソコンもインターネットも携帯も生まれ、効率化がすごく進んでいるはずですけど、それを余計なものに使ってしまって、結局、効率が悪くなっているという気もするし、仕事から逃げられなくなっている。生産性を上げるはずの要素がわれわれを追い込んでいるのではないでしょうか。
【エミン】僕は人間の能力の限界に近付いてきていると思う。さまざまなツールのおかげで生産性は上がっていると思うけど、結局僕らはちょっと毛の少ないサルにすぎない。いまだに20万年前にできたハードウエアとソフトウエアを使って、さまざまなことに対応しようとしているわけでしょ。情報が増えすぎて、物事が複雑化して、人間の処理能力の限界に近付いているからこそ、AIの助けを借りなければいけないことになっているんじゃないかな。
たとえば、昔の人は仙台に出張に行くとき、前日に1泊して翌日にミーティング出て、さらに1泊して帰ってくることもあった。いまは日帰りだよね。物事が早くなっている。メールにしても、送るとすぐに返信がきてしまう。僕はメールを受け取ると、1、2日後に返信しているから、相手にもそうしてほしいと思っているけど、すぐ来てしまう。それがまたプレッシャーになるわけ。
【パックン】僕もそれ、すごくよくわかる。送った瞬間に既読になることもあるし、すごいよね。
【エミン】わかるでしょ。