災害級のクマ騒動は今年で終わりとは限らない

今年のクマ騒動は災害級といえる。来年以降も繰り返されることだって十分に考えられる。解決策を見いだすのは容易ではないが、人間と野生動物の領域を明確に分けるため、やぶの刈り払いは地道に積み重ねなくてはならない。そして何より、人里周辺で徹底して捕獲し、個体数を管理することが不可欠だ。

街に出るクマを駆除することへの批判もあるが、登下校の児童生徒が危害を加えられる事態を放置するわけにはいかない。生け捕りして山へ放ったとしても、農作物の味を覚えてしまったクマは人里へ再び現れる恐れがある。クマとの遭遇が日常化してしまった地域の実情を理解してもらいたい。

秋田県は始まりに過ぎず、全国で同様の事態になる可能性も

クマ騒動は過疎化が著しい秋田県特有の問題に受け止められるかもしれない。確かに秋田は人口減少が最速で進み、いち早くこの問題と向き合うことになった。だが他の県も過疎化は深刻だ。早晩、同様の事態に対処せざるを得なくなるだろう。

耕作放棄地が増える中、クマをはじめとする野生動物に農作物が食い荒らされ続ければ、農家の離農や日本農業の衰退に拍車がかかる。その意味で、クマを巡る問題は都会に暮らす人たちにとっても他人ごとでは済まされない。どう対処すべきか、国全体に問われている。

小松 嘉和(こまつ・よしかず)
秋田魁新報社社会部長

1998年入社。主に社会部畑を歩み、白神山地などの取材を担当。東京支社編集部長や本社の政治経済部長を経て今年4月から社会部長兼論説委員。著書に、漫画家矢口高雄さんの話を聞き書きした『マンガ万歳』がある。