女性の地位上昇が、「職場のいい男」を減らす原因に

これは、企業の人事管理を見てきた立場からすると、至って簡単に答えが出せることです。

すでに本連載でふれてきたようにこの期間に、女性のキャリアは大きく変わっています。

短卒→事務職(一般職)というコースが激減し、女性も男性と同じように四年制大学に通い、総合職として企業に勤めるケースがどんどん増えたのです。

オフィスで話し合うビジネスマン
写真=iStock.com/maroke
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単純に考えると、一般職女性社員が総合職女性社員に代わっただけなので、社内には結婚適齢期の女性が多くいるということ自体は変わらないでしょう。

ところが、この変化により、「かつてより社内にいい男が少なくなった」ように見える現象が起きてきたのです。当たり前でしょう。短大卒で一般職となった女性の場合、学歴も給与も安定性も将来性も、総合職の男性には劣ります。当然、社内には至るところに「自分より上の男性」が溢れている。だけれども今、四年制大学を出て総合職社員となった女性たちから見ると、男性社員は「同格」でしかなく、下手をすると「自分以下」の場合も多いのです。しかも、日本型雇用のメリットはどんどん緩和されているので、昔のように「男ならだれでも管理職」になれることもありません。

結婚観をアップデートする必要がある

当然、昭和時代の結婚観のままでは、良き婚姻相手を見つけるのが難しくなってきた……。

つまり、「結婚観」も今流にアップデートし、できる女性とうだつの上がらない亭主、という今流のカップルを見出さなければならないのでしょう。

ただ、それができません。ともすると、「女が高望みだ」と揶揄する人が出てきそうですが、そうではないでしょう。進学も就職も昇進も過去と変化しているのに、世の多くの人の頭が「昭和のまま」だからなのです。それは当事者の若き女性たちよりも、親世代、周辺の人たちの「目」が問題なのではないでしょうか。

職場婚の減少の背景には、雇用構造の変化と、色濃く社会に残るアンコンシャスバイアスがあったと、私は見ています。

海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
雇用ジャーナリスト

1964年生まれ。大手メーカーを経て、リクルート人材センター(現リクルートエージェント)入社。広告制作、新規事業企画、人事制度設計などに携わった後、リクルートワークス研究所へ出向、「Works」編集長に。専門は、人材マネジメント、経営マネジメント論など。2008年に、HRコンサルティング会社、ニッチモを立ち上げ、 代表取締役に就任。リクルートエージェント社フェローとして、同社発行の人事・経営誌「HRmics」の編集長を務める。週刊「モーニング」(講談社)に連載され、ドラマ化もされた(テレビ朝日系)漫画、『エンゼルバンク』の“カリスマ転職代理人、海老沢康生”のモデル。著書に『雇用の常識「本当に見えるウソ」』、『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』(ともにプレジデント社)、『学歴の耐えられない軽さ』『課長になったらクビにはならない』(ともに朝日新聞出版)、『「若者はかわいそう」論のウソ』(扶桑社新書)などがある。