近年の劇場版は脚本のクオリティーが高い

この記事では、(執筆当時)映画公開中ということもあるので、毎年制作される「コナン映画」を扱うことにします。ただし、私の楽しみ方は、ファンの多くの楽しみ方と違うかもしれません。

多くのファンは、魅力的なキャラクター同士のやりとりを楽しみにしているはずです。あるいは、コナン映画の「あるある」(作中クイズ、有名人声優枠、豪華な主題歌など)を意外と楽しみにしてもいるでしょう。

古いコナン映画には愛すべきB級っぷりのものも多いのですが、ここ数年は、娯楽映画としてのクオリティーが上がっています。キャラクターの超人的な動きを「そんなものだ」と割り切って観られるなら、コナン映画にはいろいろな面白がりどころがあるのです。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)として知られる一連のマーベル作品のように、視覚的刺激に満ちたサスペンスフルな大作映画のようなものとして、コナン映画を観ることができるなら。

画像=『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』(C)2023青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
画像=『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』(C)2023青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

「街を破壊する想像」があるから映画版は面白い

高品質化の影響として、近年のコナン映画はハリウッド的になっています。つまり、「破壊のスペクタクル」が随所に散りばめられており、視覚的に強い印象を受けるのです。この記事では、「破壊のスペクタクル」に照準を絞ってコナン映画の面白さについて掘り下げようと思います。特に〈街の破壊に対する想像力〉の話をします。

ファンからすると変わった面白がり方に見えるかもしれません。でも、コナンに1ミリも興味なさそうな人に、「コナン映画って、〈街を破壊する想像力〉とその描写がすごいんだよね」という話をすると、いつも急に食いつきがよくなって、「映画を観たくなった!」と言ってくれることが多いんですね。

なので、これから〈街を破壊する想像力〉の話をします。なんなんだ〈街を破壊する想像力〉ってやつは……。