スマホ横目に3時間勉強しても成果はたった30分

まずは「ながら勉強」をしない子どもたち(黒色の棒)を見てみましょう。一番左が勉強時間「30分未満」の子どもたちの成績です。偏差値が49.9で、ほぼ平均点をとれていることがわかります。小・中学生で1日の勉強時間が「30分未満」というと、最低限の宿題をこなしている程度でしょうか。勉強中にスマホをいじらず、集中して勉強すれば、たったの30分でも十分に平均点をとることができるわけです。当然、たくさん勉強をしている子どもたちの方が高い学力となるはずなので、左から右にいくほど成績が高くなっていることがわかります。

続いて、「ながら勉強」をしている子どもたち(灰色の棒)の成績を見てみましょう。勉強時間にかかわらず、「ながら勉強」をしない子どもたちよりも明らかに学力が低くなっていることがわかります。勉強時間「3時間以上」の子どもたちでさえ、偏差値が50.4とほぼ平均点までしか届いていません。

先ほどご紹介した「ながら勉強」をせずに「30分未満」勉強をしている子どもたちの成績とほとんど変わりません。つまり、スマホをいじりながらダラダラと3時間勉強をしたとしても、実質30分勉強をした程度の学習効果しか得られないというわけです。

大人がスマホを管理し子どもの目に入らないようにする

榊浩平(著)、川島隆太(監修)『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新書)
榊浩平(著)、川島隆太(監修)『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新書)

この事実を知らずに、悪気なく「ながら勉強」をしてしまっている子どもたちは、どのように感じているでしょうか? おそらく、「毎日3時間も勉強を頑張っているのに、成績が全然上がらない……」と悩んでいるのではないでしょうか。せっかく勉強を頑張る気があった子どもたちでも、「どうせ頑張っても無駄だ!」と勉強を嫌いになって投げ出してしまうかもしれません。努力が報われないことは、とてもつらいことです。

子どもたちの健気な努力を、学力という結果に結びつけてあげるためにも、「勉強中はスマホの電源を切ってリビングなどに置き、目に入らないようにする」ということを徹底していただきたいのです。

榊 浩平(さかき・こうへい)
東北大学加齢医学研究所助教

1989年千葉県生まれ。2019年東北大学大学院医学系研究科修了。博士(医学)。認知機能、対人関係能力、精神衛生を向上させる脳科学的な教育法の開発を目指した研究を行なっている。共著に『最新脳科学でついに出た結論「本の読み方」で学力は決まる』(青春出版社)がある。

川島 隆太(かわしま・りゅうた)
東北大学加齢医学研究所教授

1959年千葉県生まれ。89年東北大学大学院医学研究科修了(医学博士)。脳の機能を調べる「脳機能イメージング研究」の第一人者。ニンテンドーDS用ソフト「脳トレ」シリーズの監修ほか、『スマホが学力を破壊する』(集英社新書)、『オンライン脳』(アスコム)など著書多数。