反応しないことで事故を防ぐ

恐ろしい。確信犯か? と思ったが、どうもそうでもないらしい。

村井理子『いらねえけどありがとう いつも何かに追われ、誰かのためにへとへとの私たちが救われる技術』(CCCメディアハウス)
村井理子『いらねえけどありがとう いつも何かに追われ、誰かのためにへとへとの私たちが救われる技術』(CCCメディアハウス)

このような無意識の言葉が人の心をじわじわと蝕み、疲れさせていく。SNSは楽しく便利なツールだが、距離感を掴めない人、最後まできちんと読んでいない人、とにかくアドバイスしたい人から、想定外の言葉を浴びてしまう場でもある。

私がそんな状況を回避するために、意識してやっていることがある。それは、自分自身が誰かの発言にリプライする回数を極端に減らすということだ。

もちろん、実際に知っている人や、友人からのリプライには反応することが多いが、それ以外の、まったく知らない人のアカウントからのコメントであれば、反応は極力しないようにしている(ほとんど読んではいる)。それは、無視しているのではなくて、自分の言葉が誰かを傷つけることがないように、未然に事故を防ごうと思っているからだ。

言葉の呪いを消すためのリプライ

私が例外的にリプライする時もある。罵倒された時だ。まれではあるが、「あんたバカ?」などと書かれることがある。そんな時は、しっかりと返信する。きちんとあいさつまでする。怖ろしい言葉の呪いを消すためだ。鎮火率は極めて高い。

SNSのコメント欄は、最低限の情報でコミュニケーションを行うリングのようなものだ。戦うときは正々堂々と、クリーンファイトでいこうではないですか。そして、リング上にパイプ椅子を持ち込んで、いきなり後ろから殴るような反則は避けたいものだ。いや、やってはいけない。

村井 理子(むらい・りこ)
翻訳家、エッセイスト

1970年静岡県生まれ。琵琶湖のほとりで、夫、双子の息子、愛犬ハリーとともに暮らす。著書に『兄の終い』、『全員悪人』、『家族』、『犬ニモマケズ』、『本を読んだら散歩に行こう』など。訳書に『家がぐちゃぐちゃでいつも余裕がないあなたでも片づく方法』(KC デイビス著)、『エデュケーション』(タラ・ウェストーバー著)、『ゼロからトースターを作ってみた結果』(トーマス・トウェイツ著)、『黄金州の殺人鬼』(ミシェル・マクナマラ著)ほか多数。