公務を代行できる王族を増やす提案
さらに、国王とヘンリー王子の関係性を象徴する動きがあった。11月14日のチャールズ国王の誕生日に合わせて国王は、自身の外遊中などに公務代行の資格を持つ王族を増やすための手続きを開始し、妹アン王女と弟エドワード王子を加える案を提示したのだ。
現在、公務を代行できる「カウンセラー・オブ・ステート」(国務参事官)は、国王の妻カミラ王妃に加え、21歳以上の王位継承順位上位者の、4人の「主要な」王族、ウィリアム王子、ヘンリー王子、チャールズ国王の弟のアンドルー王子とその娘ベアトリス王女が務めている。
ところが、アンドルー王子は、性的人身取引で起訴され勾留されていたアメリカの富豪ジェフリー・エプスタイン被告と親交があったことをきっかけに、王室の職務から退いている。また、ヘンリー王子と妻のメーガン妃も2020年にアメリカに移住して以来、「現役」の王族としては公務に関わっていない。
今回の国王の提案は、ヘンリー王子とアンドル王子は役職から外さず、妹アン王女と弟エドワード王子の2人を国務参事官に加えることを求めたものだ。国王はこの理由について「私が海外で公務に就いている場合など、不在のときにも公務を効率的に続けられるから」と説明している。貴族院はこれを承認し、今後必要な法改正が行われるという。
これはチャールズ国王による苦肉の策なのかもしれない。現状、ヘンリー王子とアンドルー王子は王室の職務に関わっていないので、新たに妹アン王女と弟エドワード王子を加えなければ、自分に何かあったときに頼れる王子はウィリアム王子1人になってしまうからだ。
イギリスの王室コメンテーターのリチャード・フィッツジェラルド氏がデイリー・メールに語ったところによると、これは、エリザベス女王の夫のフィリップ殿下が亡くなった頃からの懸案事項で、重要かつ、やらなければならない改革だったという。
「問題が表面化したのは、女王が95歳の時のことだ。チャールズ皇太子(当時)がコロナにかかってしまったが、ウィリアム王子は(中東の)湾岸にいたのだ」と、フィッツジェラルド氏は言う。2022年2月、女王にもしものことがあったときに代理を務めるべきチャールズ皇太子は2度目のコロナに感染したのだが、ちょうどその頃、ウィリアム王子はUAEのドバイを訪問中だったのである。
「何かあっても頼らない」国王の意思表示
今後、国王とカミラ王妃、ウィリアム王子とキャサリン妃が、海外で公務を行う時期が重ならないとも限らない。公務を代行できる王室のメンバーを増やしておきたい気持ちは理解できる。
しかしこの変更は、「ヘンリー王子とアンドルー王子にはもう頼らない」というチャールズ国王の意思表示にも受け取れる。2人を国務参事官として残しつつも、何かあったときには彼らに頼る必要がないという体制が出来上がるのだ。