コミュニティー支援とインクルーシブな組織で､持続可能な世界を ジェームス･ナッシュ　AIGジャパン･ホールディングス株式会社､AIG損害保険株式会社 代表取締役社長 兼 CEO

ジェームス・ナッシュ
英国ラドリーカレッジ卒業。PKF社を経て、1985年、保険会社ガイ・カーペンターに入社し、日本法人社長やアジア太平洋CEOを歴任。2021年1月よりAIGジャパン・ホールディングス代表取締役社長兼CEO。同年12月よりAIG損害保険代表取締役社長兼CEOを兼務。

世の中がボーダーレス化し、企業活動や人々の生活を取り巻くリスク環境が複雑化しています。その中で、皆さんを支え続けていくという保険会社としての責務を果たしていくためには、当社そのものが変化を恐れず健全に成長していかなければなりません。同時に「良き企業市民」としての役割を全うする必要があります。

AIGは、サステナブルな社会の実現に向け、山積する課題に立ち向かうためにグローバル統括責任者のポジションを設置するなど、体制強化を進めています。また、昨年より、ニューヨーク本社が年次で「ESGレポート」の発行を始めており、地域コミュニティーのレジリエンス（復元・適応）力強化、経済的な保障、持続可能なオペレーションと投資を戦略の柱として明示するとともに、「2050年までのカーボンニュートラルの実現」などについても明記しています。これらグローバルの方針に基づき、日本での具体的な対応を検討し、進めているところです。

植樹活動や中小企業支援を通じて持続可能なコミュニティーづくりを支援

災害大国日本では、頻発する災害へのレジリエンス向上が極めて重要です。とりわけ、われわれが力を入れてきたのは、災害発生時の被害軽減に取り組むコミュニティー活動や事業継続に対する支援などです。

その一つに「公益財団法人 鎮守の森のプロジェクト」への協賛があります。このプロジェクトは、植樹を通じて、津波や火災、豪雨被害を軽減すると同時に、二酸化炭素の吸収による気候変動対策に貢献する「いのちを守る森」をつくり出す活動です。

当社では、法人会・納税協会の「ビジネスガード」新規契約法人1社に対して、植樹1本分に相当する金額を同公益財団法人に寄付するとともに、植樹祭の共催や植樹のボランティア活動を行っています。地域コミュニティーのリスクマネジメントを私たちと共に支援する保険代理店の皆さまからは、「保険を通じて地域にも貢献できることがうれしい」といった声や、「自身が植えた苗が、地域を守る森になる日が待ち遠しい」など、温かいお声を頂いております。

また、災害に見舞われてしまった地域の企業がどれだけ早く復旧できるかという点も、持続可能な社会・経済のためには重要です。そのためには、「事業継続への備え」に、平時からどれだけ対策を講じているかが鍵となります。当社は、防災・減災・事業継続に向けたリスクコンサルティングを行う「中小企業強靭化きょうじんかプロジェクト」などを通じて支援を行っています。

誰もが活躍できる組織がイノベーションを生み出す

持続可能な社会の実現に向けては、多様性を受け入れ、誰もが活躍できる社内の環境づくりも欠かせません。当社の戦略の柱の1本として「カルチャーの変革」を進めていますが、性別や年齢などを問わず、誰もがお互いを認め合い、臆することなく自由に発言できる企業文化は、イノベーションを生み出す基盤となります。

その鍵を握っているのが「ダイバーシティ、エクイティ（公平性）、インクルージョン」（DEI）の推進です。AIGでは、障がいや、女性活躍、LGBTQ＋、異文化コミュニケーション、家庭と仕事の両立、若手の成長など、興味のあるテーマを選んで、社員が自発的に社内啓発活動の企画から運営まで全てを行う社員グループが世界中で活躍しています。

日本では6つのグループが活動しており、女性社員とその支援者（Ally）で構成されるグループのメンバー数は世界のAIGでも最大規模を誇るなど、会社の変革を促進する力にもなっています。社員たちの活動を全面的にバックアップするトップダウンのアプローチ、そして意欲的なボトムアップの双方向の動きが一体となって社内を活性化しているのが、当社の大きな特徴です。

そして、多様な人材がその能力を生かすには、多様な働き方も欠かせません。「社命による転居を伴う転勤制度の廃止」など、業界に先駆けた先端的な数々の取り組みを実現しています。安心して働き続けられる環境づくりなしに、お客さまのニーズに応える持続可能なビジネスを生み出すことはできないでしょう。

過去にとらわれず変革し続けていくのは簡単なことではありません。しかし、持続可能な社会の実現に向けては、変化を恐れず、人や企業を幅広く、そして公平にサポートしていくことが重要です。少しでも良い未来を築き上げることができるよう、皆さんと共に歩みを続けたいと思います。今後も、われわれのサステナブルな進化にご期待ください。