AIGが中小企業支援を本格化させたきっかけは半世紀前のニクソンショックだった。以来、保険代理店やパートナーと共に、顧客ニーズに応えるリスク対策支援を拡大。「時代の先を読んだ」商品やサービスを生み出し続けるエコシステムを築き上げた。現在の激しい経済環境の変化は50年前の状況をほうふつとさせ、AIGは日本の企業全体の99%を占める中小企業のみならず、日本企業全体の支援へと進化を加速させている。「世界中の知見を、日本企業全体を支えるためのソリューションに注ぎ込んでいる」と語るのは、AIGジャパン・ホールディングスおよびAIG損害保険のトップ、ジェームス・ナッシュ氏だ。グローバル保険業界で40年近いキャリアを有し、その大半において、日本の保険ビジネスと関わってきた。その目に映る現在、そして未来の一端を聞かせてもらった。

AIGジャパン・ホールディングス株式会社
世界約70の国・地域で損害保険をはじめ幅広い金融サービスを展開するAIGグループの日本における持株会社。AIG損害保険、アメリカンホーム医療・損害保険などの国内グループ各社を統括する。

AIG損害保険株式会社
1946年、AIU損害保険(旧AIUコーポレーション日本支店)として事業を開始。2018年、富士火災海上保険と合併し、AIG損害保険に。AIGグループの一員として個人、法人向けの多様な損害保険商品・サービスを扱う。

ジェームス・ナッシュ
英国ラドリーカレッジ卒業。PKF社を経て、1985年、保険会社ガイ・カーペンターに入社し、日本法人社長やアジア太平洋CEOを歴任。2021年1月よりAIGジャパン・ホールディングス代表取締役社長兼CEO。同年12月よりAIG損害保険代表取締役社長兼CEOを兼務。

私は1985年、世界有数の保険会社でキャリアをスタートしました。イギリスで経験を積んだ後、91年からは日本も含めた国外業務にも携わるようになり、東京を拠点としてこれまで17年余り、日本法人やアジア太平洋地域のトップなどを務めました。日本では金融ビッグバンの中、「あり得ない」とされていた保険会社の合併や海外勢の伸長なども目にしてきました。改めて感じるのは、今後も保険業界は時代の要請に応じて変わり続けていくし、そうあるべきだということです。

企業を取り巻くリスク環境はここ数年でさらに大きく変化しました。インフレや金利上昇、不安定な為替相場、エネルギー危機などによる経済リスク、戦争や紛争などの地政学リスク、そして日本特有の災害リスク……。これらにどう対処するかが喫緊の課題となっています。従来、多くの企業にとって守るべき資産とは、主に社屋、生産設備、製品や在庫といった有形資産を意味し、そのリスク対策が重視されていました。今や、企業の規模にかかわらず事業の多角化・国際化が進み、世界情勢の影響を避けることはできません。経済リスクは企業のトップリスクの一つになりつつあり、サイバー攻撃、事業中断や利益損失、サプライチェーンリスクへの備えなど、目に見えないものも含めて、企業は直面する多様なリスクを適切に理解し、どこまで受容するのか、または回避するのか、保険スキームなどを活用して移転するのかといった対策を講じなければなりません。

変化するリスク環境下でAIGが果たす役割

欧米では、リスクの専門家による分析・コンサルティング体制が整っています。一方、加入率や市場規模を見ると、日本の皆さんの保険に対する関心の高さは分かります。しかしながら、適切な保険の加入・補償内容の判断といったリスク分析の観点では、改善できる点も少なくなく、リスクのプロによる各企業の事業内容に即した細やかなリスクコンサルティングが欠かせません。

AIGグループは、リスクマネジメント支援のプロフェッショナルとして世界のおよそ70の国・地域で事業を展開しており、リスクコンサルティングのノウハウを蓄積し、磨き上げてきました。また、日本では戦後からビジネスを展開しています。リスクが多様化し、あらゆるモノや情報がグローバル化している今だからこそ、世界有数の保険会社であるわれわれの世界標準の知見が大きな強みとなっています。国内外の緻密な情報網とリスクコンサルティング体制によって、企業のニーズに応じた精緻なリスク分析・コンサルティングができるのです。

リスクマネジメントのプロとして包括的に中小企業を支援

当社の支援は、商品・サービスの提供だけではありません。リスクの多様化に伴い損害内容も複雑化しています。こうした環境下でも「適切な保険金支払い」というお客さまとの約束を守り抜くことは保険会社としての責務です。例えば、支払いが複雑化しがちな経営保険の専任チームを設置するなど、さまざまな先進的な取り組みがあります。これもグローバルで得た豊富なデータ・知見、ネットワークがあるからこそできることです。また、中小企業強靭きょうじん化プロジェクトを立ち上げるなど、中小企業の事業継続を支援し、安心をお届けすることで皆さんの事業の継続的な成長にコミットしていきたいと考えています。

そのために欠かせない存在が、各地域に密着してお客さま企業のリスクとニーズを正確に把握するプロフェッショナル、保険代理店の皆さんです。リスクに関する当社の豊富な知見に、お客さま企業を熟知する日本全国の保険代理店の皆さんの知見が加わることで、それぞれの企業の状況に応じた最適なソリューションの提供を可能にしています。

激しい変化の荒波に立ち向かうお客さまを支援し続けるためには、同時に私たちも進化しなければなりません。社員には、「これまでのやり方にとらわれずに常に進化し続ける。年次や年齢に関係なく、どんな意見でもオープンに言える職場環境がイノベーションを生み出す」といつも伝えています。私の役割は、社員が十分に力を発揮し、また家族の幸せも実現しながら働けるインクルーシブな環境をつくることです。いわば「社員を最大限にサポート」し、「その先にいるお客さまや代理店の皆さんをお支えする」ことが責務ともいえます。

【連載】リーダーの眼 ジェームス・ナッシュ