10月には、「20代で政治家になるってどんな感じ? 深堀TALK TIME!」と題して、20代の女性地方議員4人に話を聞くイベントを開催した。選挙に出たきっかけ、苦労したこと、議員になってみての体験などを、4人が本音で語ってくれた。参加者からは、「同世代の議員の話を聞きたいと思って参加しました」「ジェンダー格差がまだ大きい中、政治という大きな力を動かすため力になりたい」「立候補を予定しているので、先輩議員の話を聞きたい」といった言葉が寄せられていた。
11月には、立候補予定者を集めて1日ワークショップを開く。スピーチの練習や、チラシの作り方、政策の立案方法などの具体的な話もする予定だ。
「選挙“だけ”に集中できる人」しか当選できない仕組み
能條さんは、地方議員の多様化は、国会議員を多様化するための第一歩でもあると話す。現在の国会議員の約4割は世襲議員か親類に政治家がいる人で、約3割強が地方議員出身だ。また、それ以外では政治家の秘書、官僚出身者などが多い。
「結局は、地域に根をはっていないと国会議員にもなれません。(国会議員への)道のりのスタートは、やはり地方議員だと思います」
ただ、今の選挙のやり方や法律は、時代遅れな面も多くあり、それが若者や女性たちを選挙に出にくくしていると能條さんは指摘する。
公職選挙法の定める選挙活動のための公的資金補助は、ポスター、選挙カー、選挙カーの運転手などに限られている。また、選挙運動は無償のボランティアが原則で、例外的に報酬を支払うことができるのも「ウグイス嬢」や「カラス」と呼ばれる車上運動員、手話通訳者など非常に限られた人に対してのみ。日本の選挙活動が、ポスターと選挙カーでの活動を前提にしていることがわかる。
「何十年も変わっていない、昔ながらのスタイルで選挙活動をすることが前提になっているんです。例えば、ハガキではなく、ネットにお金を使った方がいいんじゃないかと思います。今どき、友達の住所なんて知らないですし」
能條さんは、「制度そのものが“男性的”だと思うこともあります」という。
「1、2週間の選挙期間中、ずっと走りきれる人しか、選挙で当選できないようになっているように思えてなりません。期間中毎日、朝から晩までずっと選挙のために時間を使える人ばかりではありません。それなのに、家事や子育て、介護などを他の人に任せて、選挙だけに集中できる人じゃないと、参加ができない仕組みになってしまっています」
仲間を増やしていきたい
能條さんは、日本の、若者の政治参加を促す活動はまだまだ道半ばだと感じている。
長期的に活動しているメンバーの多さ、若者の団体を支える助成金の規模などを考えても、日本はデンマークとは比較にならないほど少ない。デンマークには、若者の政治活動を支えるエコシステムがあり、多くの専従スタッフを抱えるような規模の団体も多いという。
「活動を持続させ、参加者の幅を広げるためには、“企画屋”が引っ張るだけではできないと思っています。経営者視点を持って、仕組みを作れる人になるのが目下の私の目標です」と能條さんは言う。そして「FIFTYS PROJECTを通じて、政治に関わる人たちの多様性を上げていく活動をする仲間を増やしてきたい」と熱く語った。
上智大学外国語学部卒業後、1991年ジャパンタイムズ入社。政治、経済担当の記者を経て、2006年より報道部長。2013年より執行役員。同10月には同社117年の歴史で女性として初めての編集最高責任者となる。2000年、ニーマン特別研究員として米・ハーバード大学でジャーナリズム、アメリカ政治を研究。2005年、キングファイサル研究所研究員としてサウジアラビアのリヤドに滞在し、現地の女性たちについて取材、研究する。著書に『The Japan Times報道デスク発グローバル社会を生きる女性のための情報力』(ジャパンタイムズ)、国際情勢解説者である田中宇との共著『ハーバード大学で語られる世界戦略』(光文社)など。