――ウエイトの壁を克服して次々と強豪を撃破できた要因とは?
やっぱりスピードを維持していたこと、サウスポーの利点を活かしたこと、この2点が大きいと思います、特にスピードに関して言えば、体格差があるのは不利なんじゃないかと思われてきましたが、パッキャオはそれをハンデと捉えずに逆利用した。体の大きい選手を“鈍重”と捉えて、目にも留まらないスピードのあるパンチで勝負したわけです。動けない選手は、そのパンチをどうしても怖がってしまう。それに加えて名前にオーラがかかり、相手がビビッてしまっていました。
それと驚異的なスタミナも彼の武器です。練習では平坦な道ではなく、坂道をハイスピードで駆け上がる。よほど心肺機能が高くないと出来ないことです。ローチのスタッフにアレックス・アリサというコンディショニングコーチがいて、パッキャオの成功に一役買っています。スピードを落とさないまま増量して、科学的な裏づけによってパッキャオの強靭な肉体をサポートしています。
――では今回のブラッドリー戦についてお伺いしたいと思います。ジョーさんは「とても楽しみな一戦」と仰っていますが。
パッキャオにとっては嫌な相手ですよ。これまで体格差を逆利用してスピードで翻弄する戦い方をしていましたが、今度のブラッドリーにはパッキャオに対抗できるほどのスピードがある。今、オッズは3.5対1でパッキャオが支持されていますが、パッキャオの試合にしては思ったよりも開いていない。
そして今度はパッキャオが階級を下げることになります。そこが気がかり。過去、シュガー・レイ・レナードもロイ・ジョーンズ・ジュニアも下げたときの試合で負けている。つまり下げて戦う難しさも出てくる。自分に対抗できるスピードの持ち主と戦うのはおそらく初めてでしょう。粉砕するかも分からないが、苦戦もあり得るということ。だから今回のブラッドリー戦は楽しみですね。
――試合予想としては?
大きく3つのパターンがあると思うんです。1つはパッキャオの圧勝、2つめはブラッドリーが善戦してパッキャオがかなり苦戦して勝つ、3つめは可能性としては薄いと思うんですがブラッドリーの番狂わせの勝利。そのなかのどれに当てはまるかはリングに上がって2人の噛み合わせを見てみないと分かりません。ただブラッドリーは無敗で底を見せていない。ニックネームの“サンドストーム”(砂嵐)のごとく、速射砲が当っていくと面白くなる。それにこの選手は頭から来る特徴がある。避けきれないでパッキャオがカットしてしまうと、ハンデになってしまう。