子どもがテストで30点を取ってきた。キレそうになる自分を抑えるには何ができるだろうか。ドラッカー・スクール・オブ・マネジメント准教授、ジェレミー・ハンターさんは「子どもが20歳になったときにどんな関係性でいたいかを考えることは1つの解決につながる」という――。
30点と採点された算数のテスト用紙
写真=iStock.com/takasuu
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まさかの赤点に動揺

これまで2回にわたって職場での感情マネジメントについてお話ししてきました。今回は視点を変えて、どうすれば家庭でのショッキングな出来事にも平常心で対応できるかを考えてみようと思います。

クレアモント大学院大学ピーター・F・ドラッカー・スクール准教授 ジェレミー・ハンターさん
クレアモント大学院大学ピーター・F・ドラッカー・スクール准教授 ジェレミー・ハンターさん(撮影=Stella Kalinina)

たとえばですが、お子さんが算数のテストで30点を取ってきたとしましょう。あなたならどう反応するでしょうか。つい厳しい言葉をぶつけてしまったあまりに、ケンカになってしまった……。このような悩みはよく耳に入ってきます。いくら子どもに勉強をさせようとしても、なかなか思いどおりにはいかないことが多いですよね。ましてや、日本では中学受験を経験するお子さんが多いとも聞いています。

子どもの成績に一喜一憂して自分のメンタルも乱高下してしまったり、つい同級生と比較して怒ってしまったり。子どもの将来を思って良い成績を取らせたいと考えるのが親心ですが、親の力ではどうにもできないところが非常に難しく、また、コントロールしようとすればするほど子どもとの関係が悪化してしまい、結果的にはお互いに苦しくなってしまいます。

一方的な関係性が生む歪み

ここで、あるワーキングマザーの成功体験をご紹介しましょう。

その女性は、わたしたちが特定非営利活動法人エティックと共同で2016年から実施している、社会起業家向けのセルフマネジメントプログラムの参加者でした。

社会起業家の皆さんは素晴らしい意図と情熱を持ち、エネルギッシュに社会課題の解決に向けて活動されている一方で、自分の状態には無自覚だったり、自分の行動が周りにいる家族や同僚にどのような影響を与えているかを意識していなかったりします。このため、常に疲れていたり、組織内の関係性を悪化させてしまったりすることがあります。このように事業がサステナブルな状態ではないことを鑑みて、より良い結果を得られるようにプログラムをスタートさせました。社会起業家の皆さんの思慮深さが功を奏し、これまでにいくつもの素晴らしい成功体験を生み出してきました。

さて、その女性は二人のお子さんにいつも勉強するようしつこく言い聞かせていましたが、子どもたち自身のモチベーションは上がらずじまいで悩んでいました。

なぜ子どもたちは彼女の言うことを聞かず、勉強してくれないのか。プログラムを通じて彼女が見いだしたのは、親子関係の改善点でした。彼女は、子どもたちに対して一方的な関係性しか求めていなかったことに気づいたのです。彼女が子どもたちにやってほしいことを伝えるばかりで、これまで一度も子どもたちが何を望んでいるかを聞いていなかったことに気づいたのだそうです。

ジェレミー・ハンター氏のウェビナー開講!
▼ジェレミー・ハンター氏のウェビナー開講!
プレジデント社では2022年9月から11月にジェレミー・ハンター氏を講師とした女性リーダーのための<感情マネジメント講座>を開講します。前編と後編に分けての開催となり、後編は、前編修了者、もしくはジェレミー・ハンター氏の講座の受講経験者が対象です。詳細は下記をご参照ください。
自分を知り、結果を変える ~女性リーダーのための<感情マネジメント>講座~