年金の繰り下げ受給が話題だ。しかし定年後、何年も年金無しで生活するのは苦しい。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんは「70歳まで年金が受け取れないとなると、その間の生活費に不安があるという方にぜひ活用してもらいたい、『繰り下げ受給のテクニック』が2つあります」という――。

※本稿は、井戸美枝『一般論はもういいので、私の老後のお金 「答え」をください!増補改訂版』(日経BP)の一部を再編集したものです。

机の上に置いてある年金手帳
写真=iStock.com/takasuu
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年金を増やす3つの方法

「年金は将来激減する!」って思い込んでいませんか? 実はこれから紹介する3つの方法を意識すれば、年金を増やすことができます。

1つ目は「収入を上げる」こと。会社員が受け取る厚生年金は、給料が高いほど、年金額も高くなります(上限あり)。スキルを磨いたり、役職に就いたりして収入を上げることが、結果、年金を増やすことになります。

2つ目は「定年後も働く」こと。厚生年金は、会社員として働いている限り70歳まで加入し続けることが可能。定年後も長く働くことで、厚生年金の加入期間を延ばし、年金額を増やすことができるのです。

3つ目は「年金を70歳以降に受け取る」こと。公的年金の受け取り開始は、原則65歳からですが、受給開始を遅らせることで、年金額はアップします。2022年4月からは、75歳まで受給を遅らせると、65歳から受給するのに比べて、年金額を84%アップさせることができます。

具体的に、いくら年金を増やせるのか

会社員が年金を増やす方法として、「収入を上げる」「定年後も働く」「年金を70歳以降に受け取る」という、3つを紹介しました。これらの方法で実際にどのくらい年金額が増えるのか。シミュレーションをしてみましょう。

試算例は、40歳・年収350万円のシングルの会社員。現在の年収のままで60歳になるまで働いた場合、65歳からの受給額は老齢厚生年金(厚生年金)と老齢基礎年金(基礎年金)を合計して年150万2600円となります。この金額が、それぞれの年金アップ法によって、どれくらい増えるのでしょうか。