個人情報の扱いについては法令を根拠に主張を

個人情報の取扱いの問題については、まずは校長先生に指摘し、改善を求めるのがいいと思います。何度も説明してきたように、そもそも正しく管理すべき個人情報を不適切な形でPTAに使わせているのは学校だからです。話をする際はあらかじめ、個人情報保護法や、自治体の個人情報保護条例に目を通しておきましょう。書籍『さよなら、理不尽PTA!』でも詳しく説明しています。

漫画=おぐらなおみ ※『さよなら、理不尽PTA!』より
イラスト=おぐらなおみ 『さよなら、理不尽PTA!』より

ただし、たまに「当自治体では、PTAへの個人情報の提供は特別に認められている」と言い出す校長先生がいます。そういったときは教育委員会から校長先生に話してもらう必要がありますが、こういう校長先生がいる自治体は、教育委員会も同じことを言う可能性が大です。教育委員会もダメなときは、自治体の個人情報保護を管轄する部署(総務課)に相談してください。ここで「やっと、初めて話が通じた!」となることは、意外とよくあります。教育委員会に対し、正しい情報の取扱いを促してもらいましょう。

ただ、残念なことに、この部署にも教育委員会から圧力がかかり、話がひっくり返ってしまうことがあります。こうなるとあとは、粘り強く話し合うのみです。他の教育委員会が出した手引きの、個人情報の取扱いの項目を見てもらい、それでもダメなら、地元の議員さんに相談するのもよいかもしれません。

大塚玲子(著)、おぐらなおみ(イラスト)『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)
大塚玲子(著)、おぐらなおみ(イラスト)『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)

もしそれでも改善がない場合は、学校ではなく、PTAの側の個人情報の取扱いの問題に踏み込むしかないでしょう。そのときは、個人情報保護委員会(PPC)という行政機関に相談することも可能です。相談の際は、PTAは学校と別の団体であることを最初に伝えておきましょう(ときどき知らない方がいます)。

なお、教育委員会等に「校長先生に対して、個人情報を適切に扱うよう指導してほしい」と相談すると、「任意の団体であるPTAに対して、行政は指導できない」と言われることが多々あります。PTAではなく「校長先生に指導してほしい」、とこちらは言っているのですが……。この回答には、筆者も納得しかねるところです。

「PTAのやり方はおかしい」と思ったときに声を上げよう

一般会員や非会員の立場からPTAの改革・適正化を促す方法として、筆者が思いつくのは、ひとまずこんなところです。なお、ここでは保護者のことしかふれませんでしたが、教職員の人たちも、可能であればぜひ声をあげてもらえたらと思います。「PTAに入りません」「退会します」と言ったって、もちろんよいのです。

もちろん、これまでPTAが長年引き継いできたやり方について、今の役員さんたちを責めるべきではありませんが、少なくとも「おかしい」と感じたときに声をあげることは、むしろすべての人に求められる責務のようなものではないかと思います。「おかしい」と思いながらも黙って従えば、そのやり方を認めることになります。「おかしい」と感じたことを「おかしい」と言えることが、PTAが変わるための、最初の一歩になるはずです。

書籍『さよなら、理不尽PTA!』では、PTAの役員になって適正化・改革するための具体的な情報も掲載しています。

大塚 玲子(おおつか・れいこ)
ノンフィクションライター、編集者

1971 年生まれ。東京女子大学文理学部社会学科卒業。PTAなどの保護者組織や、多様な形の家族について取材、執筆。著書は『ルポ 定形外家族』(SB新書)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』(太郎次郎社エディタス)ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』(晶文社)、『ブラック校則』(東洋館出版社)など。東洋経済オンラインで「おとなたちには、わからない。」、「月刊 教職研修」で「学校と保護者のこれからを探す旅」を連載。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。