ポイント制を否定すると、PTA経験者は心を閉ざしてしまう

僕は自分が間違ったことを言っているとはどうしても思えなかった。形式的な儀式にかけるエネルギーは不要、ボランティアを評価するなんて根本がおかしいという指摘、僕は正しい。

岡田憲治『政治学者、PTA会長になる』(毎日新聞出版)
岡田憲治『政治学者、PTA会長になる』(毎日新聞出版)

反論できるなら、してみてよ!

結局、「今年はもうポイント配付もして、ミーティングも前年度からやってしまっているから、なくすことはできないけれども、来年以降については次年度役員で相談してもらって、できれば“関係者”が集まって、ささやかに行うものとして、それにPTAが金銭的援助をする方向で」というところに収めた。

この時の僕の不機嫌さは、相当なものだったようで、ポイント制度がどれだけ僕たちの活動をゆがめているか、どれだけみんなの負担になっていても、「ポイントついてますから」の一言ですべてが手付かずになることのおかしさ、「何の権限があって人の活動をランクづけするのか!」という怒り、それらについてくどくどと話を続けた。そして、そういう言葉の一つ一つが、それを聞かされている人たちにどう受け止められていたのかについて、まったく無頓着だった。こういうやり方を標準と思って懸命に活動してきた、係や委員を経験したことのある人たちは、「自分は間違ったことをしてきた……と言われたのだ」と心を閉ざすことになったのだ。

岡田 憲治(おかだ・けんじ)
政治学者

1962年東京都生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。専修大学法学部教授。民主主義の社会的諸条件に注目し、現代日本の言語・教育・スポーツ等をめぐる状況に関心を持つ。著書に『なぜリベラルは敗け続けるのか』(集英社インターナショナル)、『ええ、政治ですが、それが何か?』(明石書店)などがある。