貧しい環境で育った子のほうが認知機能、非認知能力ともに低い
「貧困」は、子どもの脳や能力と強い関係があることが多くの研究から示されています。そして、つい最近、貧困家庭にお金を支給すると、その家の子どもの脳に変化があったとする論文が発表されました。
これまでの研究で、「言語能力」「空間的関係の認識」「真実と出来事の記憶」「認知制御」「短期記憶」は、貧しい環境で育った人ほど低いことが示されています。さらに、育った地域が、貧困地域かそうでないかで、子どものIQが違ってくることも明らかにされています。貧困地域で子どもを育てた場合、子どもの平均IQは96(通常IQは100が平均)になるのに対して、中流といわれる家庭環境で育った子どもの平均IQは104だったそうです。また、貧しい地域の学校に通っている子どもは、数学の能力や読解力の成績が伸びないことを示すデータも存在します(いずれもアメリカのデータ)。
さらに、非認知能力と一般的にいわれることが多い、(目標に向かって)自分をコントロールする力についても、貧困層の子どもでは低いことが示唆されています。自分をコントロールする力の低さが、貧困層での肥満や暴力の多さにもつながっていると考えられます。
これらの能力は、脳の中でも前頭葉というところが担っているのですが、この前頭葉は、ストレスにとても弱い場所です。そのため、貧しいことに由来しておこる多くのストレス(ネグレクトや虐待など)によって、この前頭葉の機能が低下した結果、非認知能力の低下が見られるのではないかと考えられます。