不動産投資のスタートに当たって大きな役割を果たすのが「信頼できるパートナー」の存在だ。長年この分野で実績を重ねてきたオリックス銀行が重視する「投資家との関係」とは。同社執行役員の塩貝明大氏、不動産ナレッジマネジメント部長の村山晃子氏が答えてくれた。

関心を持ち始めた時から寄り添える存在に

塩貝明大(しおがい・めいだい)
オリックス銀行株式会社
執行役員

──最近の傾向をどう捉えますか。

【塩貝】昨年と比較して個人のお客さまからのウェブ相談が1~2割増えるなど、不動産投資への関心は年々高まっていると感じます。コロナ禍もあって将来への不安が募っていること、またテレワークの普及により可処分時間が増加し、資産運用を見直す方が増えたのではないかと思います。

──オリックス銀行のこれまでの歩みや強みについて教えてください。

【塩貝】当社は1998年にオリックスグループ入りして以来、既存の銀行の在り方にとらわれずに事業を展開してきました。店舗網やATMなどを持たず、インターネットを通じた取引を中心とすることでコストを抑え、魅力的な定期預金金利を提供し、お客さまからご支持をいただいています。主力事業である投資用不動産ローンは約40年に及ぶ歴史があり、実に貸出金の約86%を占めています。デジタル化の推進、水害リスク対応ガイドラインの策定、環境配慮型物件への積極的融資など時代に沿った体制を整えながら、持続可能な社会の形成に働きかけていきたいと考えています。

──8月、不動産投資に特化したウェブサイト「manabu不動産投資」を開設されました。

【村山】プロである不動産業者と一般個人の買主であるお客さまには情報や知識の量に差が生じる傾向があります。もし、お客さまが不動産投資固有のデメリットを認識しないまま不動産投資を始めたのだとすれば、それはフェアではないと思うのです。そこで、中立的な情報を手軽に入手できる場を提供したいと思い、不動産投資に特化した情報サイト「manabu不動産投資」を開設しました。

例えば、不動産投資に興味・関心を持ち始めた方に向けては、不動産投資と投資信託や株式といった金融商品への投資の違い、不動産投資におけるメリット・デメリットなど、金融機関ならではの中立的な視点を心掛けて情報提供を行っていきます。また、当社の営業担当者と各専門家との対談企画、キャリア30年のベテラン社員による連載コラムなどを通じて、不動産投資を具体的に検討している方々に当社の考え方をお伝えしていく場でもありたいと思います。銀行の仕事は「お金を貸すこと」という印象が強いかもしれません。しかし当社が目指すのは、単に融資するだけではなく、「お客さまが不動産投資に関心を持ち始めた時から寄り添える」存在となることです。

【塩貝】不動産投資は「情報の非対称性」が強い分野といわれています。投資である以上、もうかることもあればそうでないこともあります。少なくとも、情報や知識の不足が原因で将来「やらなければよかった」と思う方を減らせるよう、当社の知見をお役立ていただきたいと考えています。

「無料で使えるなんて」と驚かれるAI査定サービス

村山晃子(むらやま・あきこ)
オリックス銀行株式会社
不動産ナレッジマネジメント部長

──2018年に業界初のサービスとして登場した「キャッシュフローシミュレーター(※)」の特徴は。

【塩貝】投資用不動産の将来キャッシュフローをAIが査定するサービスです。お客さまがパソコンで簡単な不動産情報とローンの条件を入力するだけで、2億件を超える物件データをAI解析して得た賃料、空室率の変動予測と、管理費、修繕費、公租公課、火災保険料などの運営経費の想定値が導き出されます。最長で50年間の試算が可能です。加えて、対象不動産周辺の人口動態などの各種統計、地図上の生活利便施設の表示、最寄り駅の賃貸物件動向に関するレポートを閲覧できる機能も備えています。当社取引先の広告物件も掲載されており、検討中の物件との比較検討も可能です。

【村山】賃料、空室率の変動リスクなどを把握しきれずに「購入検討時に不動産業者から提示された運営収益が続くもの」と思って投資用不動産を購入してしまうケースがありますが、ご自身でもシミュレーションしてみることをお勧めします。キャッシュフローシミュレーターは無料で使える可視化ツールですので、不動産投資を検討中の方に、ぜひ参考としてご活用いただきたいと思います。パソコン上でご利用いただくサービスですが、会員登録はスマートフォンでも可能です。

※「キャッシュフローシミュレーター」は、リーウェイズ株式会社の不動産価値分析AIクラウドサービス「Gate.」をカスタマイズしたサービス。

manabu不動産投資

「誰もが安心できる不動産投資の世界へ」をコンセプトに、不動産投資の仕組みや情報の透明化を目指して2021年8月に開設。「不動産投資」「マネー/ビジネス」「ライフスタイル」「ウェビナー」の4カテゴリで構成され、不動産投資に興味を持ち始めた人や、情報収集・比較・深掘りを目的とする不動産投資家など、さまざまな層に向けたお役立ちコンテンツを配信。

キャッシュフローシミュレーター

会員登録(無料)で利用できるシンプルな操作が特徴のシミュレーションサービス。AIが将来の賃料や空室率などを予測し「最長50年間のキャッシュフロー」の試算が可能。売却を想定した利回り計算、オリックス銀行取引企業が扱う投資用不動産の広告物件との比較、さらに人口動態や消費の活発度などの各種統計、周辺エリアの賃料相場や築年数などの分析データも閲覧できる。

共に「同じ目線」で不動産投資に取り組む

──実際の相談や申し込みはどのような流れでしょうか。

【塩貝】当社の営業担当者に直接ご相談いただく前に、お客さまがパソコンやスマートフォンで購入したい不動産とお客さま自身の簡単な情報を入力いただくと、借入条件の目安(期間、金利など)を確認できる仕組みをご用意しています。さらに当社にご相談いただければ、ウェブ経由で詳細な情報を続けて入力いただいて、営業担当者との個別相談が始まるという流れです。

ただ、お客さまご自身のキャッシュフローの安定性や資産の状況に問題がなく、たとえ物件が形式的に当社の基準に当てはまっても、それだけでご融資できるとは限りません。当社は可能な限り、物件の遵法性や安全性、賃貸収支を含めたキャッシュフローの安定性なども確認します。物件の安全性に問題があることをお知らせして感謝のお言葉をいただいたこともあります。結果的にその時は成約に至らずとも、また別の物件についてご相談いただけたことなどもあり、「不動産に強いコンサルティングバンク」として評価いただけたと、とてもうれしく思います。

不動産投資に関心を持ち始めたら「manabu不動産投資」、具体的な検討段階では「キャッシュフローシミュレーター」、そして購入を決めたら営業社員との相談を通じて、納得した上で不動産投資を始めていただきたいと思います。安定的なキャッシュフローを生む物件を介して、お客さまと共に歩み、当社も共に成長していきたいと考えています。私たちはいわば「一蓮托生いちれんたくしょう」。同じ目線で不動産投資に取り組む関係性をこれからも築き上げ、信頼できるパートナーであり続けたいと考えています。