海外の日本人コミュニティーにどうかかわるか

眞子さまの交友関係など想像はつかないが、実は海外に住むと、日本人コミュニティーのネットワークが非常に密なことに驚く。日本にいるときとは異なり、趣味も階層も違うひとたちが結び付けられ、生活に必要な情報交換をしながら、身を寄せ合うようにサバイブしていくものだからだ。

そこに直接参加しなかったとしても、そのネットワークは密で狭く、友達の友達をたどると、ほとんどの日本人に行きついてしまうほど。日本人や、日本人でなくても何らのかかわりをもった、日本語が堪能なアメリカ人から、思いもかけない聞きたくもない噂話を耳にすることも多くある。

眞子さまはこうしたネットワークに直接は参加されることはないと思うが、SNS全盛の時代に、プライバシーを守ったまま、友人を作って親密な関係を作ることができるのか心配になってしまう。

静かな生活を手に入れられるか

なによりも、皇族としての儀式や結婚式、支払われる一時金などのすべてを捨てて、多くの国民にバッシングされ、反対を振り切るかたちで眞子さまは結婚される。ご両親と、口を聞かない期間も長く続いたようだ。それはすべて結婚して「幸せになるため」である。

当たり前だがひとはみな、いまよりも幸せになろうとして結婚するのだ。結婚の失望は、「独身時代に比べて、幸せ感が増加していない」ということであることも多い。

結婚生活を振り返ったときに、犠牲にしたものの大きさを思い出し、「この結婚は正解だったのか」と天秤にかける日は、どれだけ結婚生活が順調であったとしても、必ず訪れる。皇室を離れ、日本を離れて結婚生活を始める眞子さまなら、なおさらだろう。また、眞子さまのお陰で、ニューヨークで弁護士になれた(なれるであろう)小室さん本人も、バッシングにさらされたうえに、追いかけまわされるとしたら、いずれ自分が失ったものにも思いをはせるようになるのは当然のことだ。

若い2人の生活がスムーズにソフトランディング(軟着陸)し、新しいネットワークをつくられることをお祈りするばかりだ。できれば静かな生活を、手に入れられますように。

千田 有紀(せんだ・ゆき)
武蔵大学社会学部教授

1968年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。東京外国語大学外国語学部准教授、コロンビア大学の客員研究員などを経て、武蔵大学社会学部教授。専門は現代社会学。家族、ジェンダー、セクシュアリティ、格差、サブカルチャーなど対象は多岐にわたる。著作は『日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか』、『女性学/男性学』、共著に『ジェンダー論をつかむ』など多数。ヤフー個人