北の達人と大手5社、一人あたりの利益が高いのは?

このような特別な場合を除くと、納税のほうが社会の役に立つ。企業が利益を出して納税していかなければ、世の中は成り立たない。なぜなら赤字企業はほとんど納税しないからだ。

木下勝寿『売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密』(ダイヤモンド社)
木下勝寿『売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密』(ダイヤモンド社)

「北の達人」の利益は29億円だ。世の中には当社よりも役立っている(利益を出している)会社はたくさんある。

だが、従業員一人あたり利益は2332万円(2020年2月期)で、図表2の営業利益上位大手5社よりも大きい。

法人税は利益に応じて課税されるので、従業員一人あたり法人納税額は大手より高く、当社の従業員は、大手企業の従業員よりも世の中に役立っていると言える。従業員には「自分がこの国を支えているという自負を持ってほしい」と伝えている。

利益を上げ、支払った税金が社会のために使われる。さらに言えば、税金を有効に使ってもらうために、信用できる政治家を選ぶ必要がある。

企業が利益を上げることは、お客様がお金を払いたいほど喜ぶ商品・サービスを提供し、お客様の役に立つことだ。そして利益を納税という形で社会に還元し、社会全体の役に立つ。企業はこの2つで社会に役立っている。

まとめると、売上は企業のお役立ち度の合計を数値化したもの。利益とはその中で自社が生んだ付加価値分。社会貢献とは稼ぐこと。お金を稼ぐことは社会貢献。

だから利益が大事なのだ。

【図表2】大手5社との従業員一人あたり利益比較
出典=『売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密』より

売上OSを「利益OS」にする

以上が、利益に対する「北の達人」の考え方を示したストーリーだ。これをつくった理由は2つある。

一つは新卒社員に「お金とは何か」を考えてもらうこと。もう一つは中途入社の社員に、「なぜ利益が大事なのか」を考えてもらうこと。新卒者は、この内容をすぐに理解してくれ、反対に、「世の中の会社はなぜ利益より売上を大事にするのでしょうか」と疑問を抱く。

また、「毎日の仕事の意味がわかりました」「世の中の役に立ちたいので、ボランティアをしようと思っていましたが、一所懸命、目の前の仕事をすればいいとわかりました」という感想もある。

中途入社の社員は、前職の影響で、売上重視の考えに染まっている人が多い。だから私は、パソコンの基礎システムであるOS(Operating System)になぞらえ、「今までのOSでは『北の達人』のやり方は理解できないでしょう」と話す。

売上をたくさん上げることが目的の行動と、利益をたくさん上げることが目的の行動ではまるで違う。だから、売上OSから利益OSに入れ替え、そのうえでこれまで経験してきたものをアプリとして載せてほしいと伝えている。

また、日常業務で利益の大切さを忘れそうになった人がいたら、「売上は誰でも上げられるから意味ないと、最初に話しましたよね」と言っている。

この話を経営者向けの講演ですると、

「自分たちが何のために利益を出すのか考えたことはなかった」
「利益を出すことが社会貢献になるとは考えたこともなかった」

と言う人が多い。

木下 勝寿(きのした・かつひさ)
北の達人コーポレーション社長

1968年、神戸生まれ。株式会社エフエム・ノースウェーブ取締役会長。リクルート勤務後、2000年に北海道特産品販売サイト「北海道・しーおー・じぇいぴー」を立ち上げる。2002年、北海道・シー・オー・ジェイピーを設立(2009年に北の達人コーポレーションに商号変更)。史上初の4年連続上場。株価上昇率日本一(2017年、1164%)、社長在任期間中の株価上昇率ランキング日本一(2020年、113.7倍、在任期間8.4年)。著書に『売上最小化、利益最大化の法則 利益率29%経営の秘密』(ダイヤモンド社)など。