依然としてコロナ禍の長いトンネルから抜け出せない状況が続くが、感染の急拡大を機に在宅勤務が一気に普及。足元ではオフィス勤務へと回帰する動きが見られるものの、日本人の働き方は大きく変わった。それぞれのニーズや事情に応じて、業務を進める場所を選ぶという「働き方の多様化=ハイブリッドワーク」が進んだのだ。そして、こうした時流に対応したソリューションを提供し、日本における“真の働き方改革”を縁の下で支えているのがシスコシステムズのWebexだ。

コロナ収束後も、ハイブリッドワークが主流に

――新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、日本でもテレワークが急速に普及しました。しかし、出社勤務に回帰する動きもあり、ワクチン接種が進んだ後もテレワーク体制を続ける企業が多い欧米とは温度差があるようにも思われます。

もともと日本ではオフィスに出勤して働くことがベースとなっていましたが、コロナ禍で急遽、否応なく在宅勤務へのシフトを強いられました。これに対し、地理的な問題も関係して、もともと欧米では以前からオフィス勤務とテレワークの併用が進んでおり、こうした働き方に対する文化が形成されていました。

くしくもコロナ禍は、結果的に日本人の働き方をグローバルスタンダードに導いた側面もあると言えるでしょう。少なくとも、在宅勤務という新たな働き方の選択肢が加わったことは紛れもない事実です。

現状オフィス勤務に回帰している企業も増えていますが、社内でテレワークと出社勤務が混在しているケースも多く、シスコでは、従業員自身が自分のベストパフォーマンスを出すために、在宅勤務とテレワークを自由に選択できる働き方を「ハイブリッドワーク」と表現しています。では、コロナ感染の脅威が和らいだ後は、元通りの働き方に戻ってしまうのでしょうか?

逆に、私は読者の皆さんに、「あなたは戻りたいですか?」と問いかけたくなります。気がつけば、コロナ禍では働き方だけにとどまらず、私たちの生活スタイルにも大きな変化が生じています。

たとえば、製品を購入する際、店舗に出向くのではなく、インターネット上で購入する機会が多くなってきています。消費行動だけにとどまらず、予約をはじめとする様々なサービスの利用もネット上で行われるケースが主流化してきました。

働く環境においても、社内・社外ともにDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されていくのは必至です。こうして提供されるサービスがデジタルへとシフトし、消費者もそのような状況を望んでいるとすれば、働き方を含めた様々な社会活動は、もはや昔の姿には戻らないと考えるのが自然でしょう。

石黒圭祐(いしぐろ・けいすけ)
シスコシステムズ合同会社
執行役員コラボレーションアーキテクチャ事業担当
大阪府生まれ。大学では経済学・情報学を専攻。2001年にシスコシステムズへ入社し、チャネル営業、製造・流通サービス担当のハイタッチ営業を経て、2009年からコラボレーション営業に従事。日本国内の多様な業種・業界の顧客に対し、「“自然と変えられる”新しい働き方」を提案・提言している。

まだ日本は新しい働き方を手探りで模索している状態

――日本企業の間では、在宅勤務やウェブ会議は効率性や生産性が低下するとか、オンとオフのメリハリがつけにくいとかいった声も聞かれますが、それらの点に関してはどのようにお考えですか。

先程、すでに欧米ではハイブリッドワークに対する文化が形成されていると述べました。これに対し、コロナ禍が働き方を変えるスタート地点となった日本では、まだ文化やノウハウが備わっていないと言えるでしょう。

ハイブリッドワークの中で従業員が感じる不安やストレス、生じる不都合を把握し、それらを解消するためにどのような施策や手当、ツールを用意すべきなのかについて、なかなか見当がつかない経営者や管理職が多いのが現実です。言わば手探りの状態で、様々な試行錯誤を繰り返しながら業務を進めているわけです。

従来通りのオフィス勤務なら、誰が何をやっているのかを目視できただけに、マネジメントを行う側も不安を抱きがちでしょう。しかし、目視できないことを大前提に、マネジメントの手法自体も変わっていかざるをえません。

――もっとも、特に年配の経営者や管理職の間では、ITのことに苦手意識を持つ人が少なくありません。

トップがそのような意識のままでは、会社の文化を変革することはなかなか困難でしょう。年代を通してITに疎いことを言い訳にしているケースも数多く見受けられますが、意外とスマホは平気で使っていたりするものです。Webexではボタン1つ押せば容易にミーティングに参加できるようなソリューションを提供しています。単に新しいことにチャレンジしていないだけで、実際に試してみたら想像していたもの以上に簡単なことに驚くでしょう。

テクノロジーに関する認識と言えば、非常にわかりやすい例を挙げられます。日本では代表電話を取るためだけに出社する従業員が少なからず存在していますが、Webexが提供しているクラウド電話のソリューションであるWebex Callingを活用すれば、在宅勤務で代表電話を受けることはもちろん、着信と同時に10人の従業員の電話をいっせいに鳴らすような運用も可能です。

このようなテクノロジーの存在を知らないゆえに、「代表電話は素早く受けるのがビジネスマナーだから、コロナ禍でも出社すべき」という発想に陥ってしまうのです。ともすれば、この認識の相違は企業内におけるジェネレーションギャップに結びつきかねません。

スマホをはじめとするIT環境の中で生まれ育った世代が続々と社会に出てきているわけですから、「テクノロジーに疎く、出社を強いるような企業で、イノベーションを起こせるわけがない」という不満が募っても不思議はないでしょう。せっかく優秀な人材を獲得しても、ハイブリッドワークに上手く対応できなければ、結果として人材流出を招いてしまう恐れも出てきます。

一方で、先進的なリーダーは足元の変化を大きなチャンスと捉え、社内の構造改革を推進しようとしています。こうして上手く対処できれば、その企業はさらに成長する可能性が高まりますし、従業員の士気も上がるでしょう。今後数年のうちに、働き方への対応を巡って二極化が進み、企業間の格差は広がってくるように思われます。

リアル以上に効率的で生産性の高いバーチャルの効用

――ハイブリッドワークに上手く対応して企業としての成長性を高めるうえで、どういった着眼点が求められてくるのでしょうか。

ROI(投資利益率)という観点でウェブ会議システムへの投資を検討する際には、参加する従業員のやる気や満足度といった表面的には見えてこない効用にもしっかりと目を向けることが、大事なポイントになってくるでしょう。たとえば、リアルに対話しているケースと遜色のない明瞭な音質で会話が聞こえ、鮮明な画質で、オンラインコミュニケーションができるなら、むしろリアルの会議よりも効率的で参加者もストレスを感じません。

また、言語が異なる人同士が直接対話する場合、従来は同時通訳者が同席する必要が生じていました。ところが、WebexならAIがリアルタイムに自動翻訳をこなし、字幕表示をし、録画もできるので、リアルよりもバーチャルのほうが利便性は高いと言えるでしょう。

それでも世間では直接会うのが最善だと思われがちですが、実は意外とそうでもないという事実を端的に表しているのは、シスコにおける従業員出社率の推移です。その事実を知った皆さんが驚かれるのですが、シスコでは毎日出社する従業員はわずか2%に過ぎず、約80%は月2~3回程度、必要な時にだけ出社するという状況です。

もちろん、出社して対面のミーティングを行うことも可能ですが、在宅でもきちんとコミュニケーションを交わせるし、バーチャルなら対面以上に気軽な感覚で会えるから、オフィスに出向かなくてもまったく問題が生じません。こうした体験も社内の誰もが共有しているからこそ、出社する従業員が極めて少ない状態が続いているわけです。

リアルの対話と遜色のない明瞭な音声、鮮明な画像で実施できるコミュニケーションなら、参加者もストレスを感じない。

「オフィスに出向いたほうが効率的」と考える人の多くは、勤務先から支給された1台のPCだけを頼りに、不鮮明な画像と不明瞭な音声のウェブ会議を通じて、仕事を進めているのではないでしょうか? とりあえず誰かの意見に頷いてはいるものの、はっきりと聞き取れなくて要点をつかめなければ、生産性が低下するのも無理ありません。

ただし、「出社しないと仕事がはかどらない」と思いながらも、その一方で感染が広がっていることに恐怖心を抱いている人も少なくないでしょう。そういった人たちはリスクを感じながらも、出社して業務をこなしているわけです。

こうした現場の本音をきちんと把握できれば、経営者も生産性を向上させるための正しい決定を行えるでしょう。しかし、現場の声は経営者のところまで届かず、黙殺されているケースが大半です。その結果、経営者はコストだけで設備投資を判断しがちになります。

――シスコのソリューションの強みとしては、どういったことが挙げられますか。

技術面から言えば、オンラインコミュニケーションシステムにおいては、①音声を伝送する仕組み、②映像を伝送する仕組み、③資料の共有という3つの要素が必要不可欠となってきます。このうち、①に関してシスコは20年以上も前からIP電話の開発とその技術革新に取り組んできました。

電話線ではなくインターネット上でクリアな音声をやりとりするためのテクノロジーを向上させるために、長く切磋琢磨を続けてきたわけです。高いセキュリティを保ちながら伝送効率を高めるために、音声データの圧縮とその解凍のための技術を磨き上げてきました。

100kbpsよりも1Mbpsといったように、より広い帯域を用いれば伝送量が増えるので、クリアな音質を実現できます。しかしながら、その帯域の通信が行えない環境下では、一気に音質が劣化してしまう恐れが生じます。

高速の光ファイバー回線から3Gの携帯電話まで、ウェブ会議の参加者の通信環境は様々でしょう。そういった方々が一律に参加することを前提に、伝送の遅延などを巧みに制御しながら、安定してクリアな音声を実現する工夫が求められてきます。

クラウド上のサービスであるWebexにもシスコが培ってきた音声に関するテクノロジーが実装されています。それをベースとしたうえで、AI翻訳やノイズ除去といった最先端のテクノロジーを買収によって獲得し、ポートフォリオを拡充してきました。

なぜなら、「すべての人にインクルーシブ(包括的)な未来を実現する」とのミッションを掲げているからです。あらゆるお客様により満足度の高いコミュニケーション基盤を提供するために、シスコではソフトウェアからハードウェア、クラウドまでを包括的に手掛けています。

ソフトに限定した提供になると、組み合わせて使用するハードウェアに責任を持てなくなりますし、その逆のパターンも出てくるからです。さらに、今はクラウドという新しいサービスの活用も広がり、それらをハイブリッドに提供できることは独自の強みと言えるでしょう。

しかも、お客様はそれぞれの投資サイクルや経営判断などに応じて、今までに投資してきた機器も引き続き使用しながら、クラウドのメリットも享受できる部分的な導入も可能です。それぞれのお客様のスピード感にマッチしたかたちで導入を進めながら、ハイブリッドワークに対する社内文化を築いていけるわけです。

そして何より、Webexは誰でも特別な設定をすることなしに、安全、簡単に話したい相手とつながることが可能です。Webexのページにアクセスし、IDとパスワードを入力してログインすれば、アプリをダウンロードする必要もなく、コミュニケーションを交わせるのです。

先日Webexは、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)の評価が完了し、ウェブ会議サービスとしては、初めてISMAPクラウドサービスリストに登録されました。2021年からは、日本の各政府機関がクラウドサービスを調達する際は、原則として、ISMAPクラウドサービスリストに登録されたサービスから調達すること、としています。クラウドサービスの導入課題は、官民ともにセキュリティ不安の声を最も多く聞きますが、Webexなら安心してご利用いただけます。

便利だから使っていたら、たまたまシスコのソリューションだったという自然な流れで浸透できれば、日本におけるハイブリッドワークの推進にWebexも貢献できそうです。