コロナ禍によって到来したテレワーク時代。ジャーナリストの河合雅司さんは「テレワークの普及で仕事に見合わない給料をもらう年配社員や、社内失業者の居場所がなくなった」と指摘します。彼らが生き残る道とは――。

※本稿は、河合雅司『未来のドリル コロナが見せた日本の弱点』(講談社現代新書)の一部を再編集したものです。

ノートパソコンを使用する男性の手元
写真=iStock.com/kazuma seki
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日本のテレワークの現状

テレワークはコロナ禍で進んだことの代表例だ。

これも「コロナ前」からのビジネス課題であったが、どちらかといえば子育て中の社員向けといったような限定的な使われ方をしてきた。コロナ禍で必要に迫られて一気に拡大した形だ。

もちろん順調に普及しているわけではない。導入してみたものの、能率が悪くて再びオフィスに出社して働くという旧スタイルに戻した企業は少なくない。顧客の要望や取引先企業の都合で、テレワークに切り替えたくてもできない職場もある。

NIRA総合研究開発機構などの「 第4回テレワークに関する就業者実態調査(速報)」(2021年)によれば、テレワークの平均利用率は緊急事態宣言下にあった2020年4~5月は38%だったが、6月には29%に下落した。2021年4月は28%だ。

テレワークはワークライフバランスを改善させる

一方で、大企業を中心にテレワークの導入に積極的なところも多い。

国土交通省の上場企業向けアンケート調査(2020年8~9月)によれば、18%が今後「拡大する」、53%が「同程度を維持する」と回答している。今後も感染状況に応じて取り組みを強めたり、弱めたりを繰り返しながら進んでいくだろう。

感染が収束してもオフィスへの出社と併用という形で着実に定着していくとみられるが、企業が考えるテレワークのメリットのトップは「ワークライフバランスが改善」(79%)だ。続いて、「業務の効率化・無駄な仕事の削減につながる」(64%)、「従業員が自己管理の習慣をつける機会になる」(35%)、「生産性の高い仕事に集中することになる」(34%)といった理由が上位に並んでいる。

導入に熱心な企業は、感染防止対策という“消極的な理由”ではなく、むしろ社員個々の労働生産性を向上させる手段の一つとして位置づけているのだ。テレワークは、各社員の仕事に対する姿勢や能力が見えやすいためである。