社内の確認体制については、同社がメディアの取材で「複数の人が監修した」と明言しているので、担当者一人の暴走などではなく企業公式としてこの内容をOKだと捉えていたとわかる。ダブルチェック体制の甘さというよりは、炎上しやすい話題の把握など、認識の甘さに気づくための体制不足があった。
また、推測の域を出ないが、話題になりやすいインパクトのあるイラストを使ったキャンペーンや執筆時点でフォロワー数3.2万人のアツギのアカウントが、フォロワー数91.7万人の人気イラストレーターと交流していたことなどは、フォロワー数の増加など数字的な成果を狙う意図があったのかもしれない。
SNSマーケティングに詳しいスパイスボックスの小谷哲也氏は、「企業が運用するツイッター公式アカウントがフォロワー数をKPIにするのは一般的で、他にも『いいね』や『リツイート』などもKPIになる」と話す。
燃えやすい要素とツイッターをはじめる前に企業がすべきこと
企業の公式アカウントでの炎上を防ぐには、どこの会社にも起こり得る問題として性別にかかわらずツイッター担当者や部門全体のリテラシーを上げていくことが必須だ。
ソーシャルメディア上で炎上しやすい要素をあらかじめ押さえた上で、今社会で起きている問題、話題に常にアンテナを張り投稿内容に問題がないか多様な視点で複数者が確認することが重要だ。
ソーシャルメディアで炎上しやすい話題について、山口真一氏著の『炎上とクチコミの経済学』(朝日新聞出版)で以下のように区分しているので参考にしていただきたい。
また、多くの場合、企業がツイッターの公式アカウントを運用する目的は商品の売上向上にある。そのため、どうしても自社のPRにつなげようと話題になりやすい投稿をしたくなる。
今回のタカラトミー、アツギの炎上事例からわれわれが学ぶべきことは、一人の担当者が(特に自己判断で)投稿をし続けた場合、「話題になる」ことを目指すあまり、近視眼的になりやすい可能性が“極めて高い”ということだ。
担当者任せにするのではなく、企業として運用体制の構築に取り組むことが求められる。企業がツイッター公式アカウントを運用するにあたって、少なくとも以下についてはひと通り組織として準備した上で運用することが望ましいだろう。
(基本的な利用ルールに加え、炎上しやすい話題、ツイッターユーザー文化の把握など)② 炎上の予防策
(投稿内容のルール、ダブルチェック体制、投稿作業のルールなど)
③ 炎上した際の対応策
(炎上の定義、どういった事態が起きた時にどんな行動をとるか)
ソーシャルメディアの影響力が高まり続ける中、ツイッターからの一つの投稿で、これまで懸命に積み上げてきた企業のレピュテーション(評判、評価)や、必死の思いで開発した商品の評判に致命的なダメージを与える事態が起きている。
企業や商品のファンを増やすための活動で、企業や商品の大切なファンから見放されることだけは避けなければならない。
1980年生まれ。2003年早稲田大学卒業、エン・ジャパンでの求人広告コピーライターを経て、ITベンチャーのワークスアプリケーションズ、博報堂系デジタル広告会社スパイスボックスなどで約15年にわたって広報業務に従事。18年にスパイスボックス経営戦略室マネージャーに就任後、19年より現職。“広報の力で企業競争力をアップする”広報コンサルティング会社・LEAPFROG(リープフロッグ)代表。「広報の目的」=「企業成長」と捉え、伴走型、人材育成型による広報組織の立ち上げ支援を実施。専門は、経営戦略と連動した広報戦略の全体設計、企業成長に資する採用コミュニケーション、社内コミュニケーション施策の設計と実行支援。メディアにて、広報、人事、コミュニケーション領域の執筆多数。