スティーブ・ジョブスも使った3ポイント推し

あなたがつい最近、これは誰かと共有したいなぁと思った「推し」を想像してみてください。あまり評価が良くなかったのに見てみたらすごく泣けた映画? フラッと入ったけど雰囲気がすごくよかったバー? 周りの評判がよかったから実際にドラマで観たらめちゃくちゃツボだった塩顔の演技派優?

誰を、何を思い浮かべたにせよ、やっぱり好きなものですから推したいポイントはたくさんありますよね。仮にとてもよかった映画を1本推すとしましょう。

まず俳優の演技が迫真だったとか、脚本に予想もしないどんでん返しがあったとか、挿入歌がそのままCDを買いたくなるぐらい耳に残ったとか、ただAmazonで100円でレンタルできるくらい安かったとか、まぁとにかくたくさん思い浮かぶはずです。

こうした推しポイントを、箇条書きにしてまとめてください。

出しきったら、箇条書きにして挙げたポイントを三つに絞ってください。たくさんのポイントで推すのではなく、たった三つのポイントで推すことで、推しとしての聞き応えがグッと増します。3点に絞って説明するというのは、かのアップルの創業者、スティーブ・ジョブズのスピーチを見ても、その有効性がわかります。伝説の「iPhone発表プレゼンテーション」においても彼は、「iPod、電話、ネット通信、独立した三つの機能を同時に使える、それがiPhoneなのだ」と説明したことで有名です。

「3点」というのは、人間の短期記憶において最も印象に残りやすい数が3であり、それによって話の輪郭が明確になるからだといわれています。

いわゆる、「3ポイントルール」自体は比較的有名ですが、問題は何かを推すという話術・文章術においてどうやって3ポイントまで絞るか? ということでしょう。

コツは角度を変えること

私は「角度」を重視して3ポイントまで絞ることを奨励しています。

たとえば、V6の岡田准一さん。国民的な俳優にしてモデルであり、演技力、ビジュアル、存在感どこをとっても一流のこの方を推すポイントは、いくらでもありますよね。

Jini『好きなものを「推す」だけ。共感される文章術』(KADOKAWA)
Jini『好きなものを「推す」だけ。共感される文章術』(KADOKAWA)

そこで重要なのが角度。特に、誰も想像しないような変化球の角度です。3ポイントのうち2ポイントまでは誰でも共感できるような平凡な推しにとどめておき、最後の1ポイントでここぞとばかりに想像できないような変化球を投げる。

これによって一気にその推しが印象深く、また共感されやすくなります。

「演技がうまい」「顔がかっこいい」なんてことは誰でも想像できます。むしろ知っています。しかし、岡田准一さんの演技力、しかも「声」の演技力をポイントに挙げて、スタジオジブリ『ゲド戦記』の主演としての岡田准一がどれだけ素晴らしかったか、これを論じるとなれば、少しは興味がそそられませんか?

極めて強い存在感、孤高を体現したような表情。モデルから俳優まで多様にこなす岡田准一だが、自分にとって彼の最も印象的な活躍は『ゲド戦記』だ。

『ゲド戦記』はアニメなので、岡田准一の印象的なビジュアルは一切出てこない。

しかしだからこそ、岡田准一の色気が十分に伝わる声が立つ。少し不器用さがあるけれど、それが主役のアレンの器用とはいえない人格と見事に絡み、岡田准一の高い演技力と色気が強烈に印象に残る。

こう説明すれば、既に方々で魅力を語りつくされた岡田准一さんの推しといっても、聞き手はちゃんと関心を持って聞いてくれるはずです。

写真=iStock.com

Jini(ジニ)
ゲームジャーナリスト

批評家、編集者。2014年にブログ「ゲーマー日日新聞」を立ち上げ、2500万PVを達成。noteにて有料マガジン「ゲームゼミ」を開設し、フォロワー24000人突破。ゲームメディアの副編集長を務めつつ、TBSラジオ『アフター6ジャンクション』にもレギュラー出演。魅力的なゲームを各地で「推し」ながら、ゲームの文化的価値を研究している。