キュレーターとしてのキャリアがあり、第161回直木賞候補作『美しき愚かものたちのタブロー』では国立西洋美術館の松方コレクションを作り上げた実業家・松方幸次郎を主人公にするなど、画家やコレクターの人生を描いてきた小説家の原田マハさん。最新刊『20 CONTACTS 消えない星々との短い接触』は原田さんが総合ディレクターを務める展覧会とリンクする短編集で、小説の中で20人の物故画家、陶芸家、漫画家、小説家などに“会いに行き”つかの間の夢の遭遇を果たします。そんな原田さんが説くアート鑑賞の効用とは——。

世界中から美術の専門家が3000人集結

——9/1~9/8に京都・清水寺で開催される「CONTACT つなぐ・むすぶ 日本と世界のアート」展では、総合ディレクターを務めていらっしゃいます。今回はどうしてこの仕事を引き受けたのでしょうか。

キュレーター時代は森美術館などに務めていましたが、作家となってからは小説に専念してきたので、現在、キュレーターと自称はしておりません。ですから、今回は“作家として”企画から展示まで手掛けるのは初めてということになります。

アートの小説を書いてきたことはもちろん、自分の人生の中にはずっとアートがあったので、「CONTACT―」展では今までお世話になったアートに恩返ししたいなという気持ちがありました。

原田マハさん
撮影=森 榮喜

日本ではあまり知られていないんですが、この期間、ICOM(国際博物館会議)という組織が3年に1度の世界大会を京都で初めて開催します。世界中から美術の専門家が3000人集まってくるということは、美術関係者からすると、ものすごいチャンスなんですよね。その方たちと交流し、日本文化を知ってもらえる。実は私が大会の開催を知ったのは去年で、その時点で1年を切っていましたが、通常の美術展では考えられないぐらい準備期間が短くてもやるべきだと……。これまで自分がしてきたことを共有し、読者の方がアートとコンタクトするきっかけを作れたらという思いもありました。