ムダな社内業務をリストラする!

最後はソフト面での変革だ。これは仕事を減らすことを指す。業績に対するマイナスの影響を最小限にするためには、顧客対応の時間は確保しなくてはならない。ターゲットは社内業務だ。

多くのビジネスパーソンが感じているムダな社内業務として、「長い会議」「誰が読むのかわからない報告書類」が挙げられる。この2つは本当に必要なものだけにする。そのためには、会議を仕切る、報告書のとりまとめをする担当者を減らすのがポイントだ。私もかつて企業で会議を仕切る、報告書をとりまとめる担当をしていたことがある。恥を忍んで言えば、当時はそれが役割だと考え、会議も報告書も増やしてしまった。仕事を作ってしまうのだ。だから、先に担当をなくしてしまったほうがよい。

同様の理由で、稟議書の決裁者を減らすのも有効である。決裁者が多いと意思決定に時間がかかる。また、決裁者が多くなると、差し戻しが発生する確率も上がる。そうなると、起案者は修正や資料作成をしなくてはならず、そこにも工数が発生する。決裁者を減らすことで、業務のスピードアップと工数削減が実現できる。

社長が管理職を集めて順番に職場の現状を聞く御前会議もなくしたほうがよい。管理職が他者の発表を待つ時間はもったいない。その分、職場にいる時間を増やしてあげれば、仕事の滞留を防げる。また、御前会議の資料を作る時間ももったいない。資料作成に部下が関与しているならば、そこには大きな時間的コストがかかっている。経営者が現場の状況を知りたければ、管理職を個々に呼べばよい。あるいは、現場に出向いていく手もある。

もうひとつ大きな時間のロスになるものが「仕事のやり直し」だ。これを防ぐためには管理職が明確な指示を出す必要がある。

例えば、部下に顧客向けの提案書を作成する指示を出したとしよう。あがってきた提案書が期待していたものと違う場合、ダメ出しをして修正をさせることになる。それは時間のロスにつながる。かつては、部下に何度もやり直しをさせながら鍛えるという指導法もあった。そのやり方も否定はしないが、いまはそのような時間的余裕がない。

例えば、「文字をたくさん読まなくても見るだけで直感的にわかる提案書」を求めるならば、そのようになっている提案書のサンプルを見せて「こういう風に仕上げてほしい」と具体的に指示する。そうすることで、やり直し仕事を防ぎ、時間のロスを減らす。

このように、経営トップのリーダーシップ、ハードウェア的なロック、ソフト面での変革を進めることで、真の業務効率化を進めることこそ、働き方改革に取り組む王道である。

中小企業は大企業と異なり、働き方改革の主幹になる専任者を数多く置くことは難しい。しかし、大企業にはない意思決定の早さ、素早い行動ができる機動力があるはずだ。大企業との間で広がってしまった働き方改革への取り組みの差を一気に挽回できる可能性は十分にあると考える。

濱田秀彦(はまだ・ひでひこ)
株式会社ヒューマンテック代表取締役。マネジメントコンサルタント。ビジネス書作家。
1960年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業。住宅リフォーム会社に就職し、最年少支店長を経て大手人材開発会社に転職。営業マネージャー、経営企画マネージャーを経て、1996年に独立。現在はマネジメント、コミュニケーション研修講師として、階層別教育、プレゼンテーション、話し方などの分野で年間150回以上の講演・セミナーを行っている。これまで指導してきたビジネスパーソンは20000人以上。『なぜか評価される人の仕事の習慣』『上司の言い分 部下の言い分』『年上の部下を持ったら読む本』など著書多数。