働き方改革では社員の副業・兼業が推進されているが、7割の企業が禁止している。IT技術の進歩で「時間・空間に縛られない働き方」が可能になり、広い範囲で副業が解禁されるはずが、遅々と進まない。柔軟な働き方の議論が労使でできていないからではないか。副業を推進する企業の事例から検証する。

一般社員の半数以上が副業をしてみたいと回答

小学生を相手にプログラムを教えるダンクソフトのエンジニアの社員。

政府が推し進める働き方改革では、総労働時間の削減や女性の管理職・役員の育成などに加え、副業や兼業が議論のテーマとなっている。厚生労働省は有識者による検討会を設置し、議論を加速させてきた。

総合人事・人財サービスを展開するアデコ(東京都港区)は6月4日、都内でプレスセミナー「複業時代の展望と課題」を開いた。講師の柳川範之・東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授は、会社員の副業が外的な要因や内的な要因により、可能な状況になっていると指摘した。

特に、ITやAI(人工知能)の進展などでクラウドソーシングやクラウドワーキング、テレワークなどが可能になり、「時間・空間に縛られない働き方」が注目されているという。「労働時間の管理などをはじめ、それを阻む雇用制度・慣行がある」と課題も指摘した。

アデコの岩嶋宏幸・マーケティング&イノベーション本部長は、同社がこのほど実施した調査結果を紹介した。上場企業に勤務する30代から50代の管理職(部長職・課長職)510人と、20代および30代の一般社員500人を対象に実施したものだ。

次のような結果になった。

「約7割の勤務先で副業・複業を禁止しているが、管理職の8割以上は、個人的には副業・複業を認めた方が良いと考えている」「一般社員(非管理職)の約8割は副業・複業の経験がないが、そのうちの半数以上は、副業・複業をしてみたいと考えている」

柔軟な働き方の中で模索する「副業」

ここからは、社員の副業を一定の条件のもと、認めている会社を紹介したい。

インターネットサイトやアプリケーションのコンサルティング・制作・構築などを手掛けるダンクソフト(東京都中央区)は、就労スタイルや勤務場所を社員の考えや価値観、ライフスタイルに可能な限り、合わせるようにしている。入社時などに労働契約を交わすときは、代表取締役である星野晃一郎氏と話し合い、主な就労場所を本社・自宅・サテライトオフィスのいずれかから決める。

労働時間も柔軟に対応する。正社員は通常、フルタイム勤務となるが、短時間勤務を希望する社員は話し合いのうえで労働時間を決める。短時間勤務の正社員は現在、「週30時間(週5日)契約」が2人、「週4日(1日8時間)契約」が1人である。

毎年3月、星野氏と本人で1年間を振り返り、次年度の賃金の昇給などについて話し合う。その際に、就労スタイルや勤務場所、労働時間を状況に応じて変えることもする。