「働き方改革」が進まない原因は企業の組織風土にある。残業規制をしただけでは、「隠れ残業」や「持ち帰り残業」は減らず、抜本的な働き方改革はできない。組織風土改革のパイオニアであるスコラ・コンサルトが発表した「上司がムダを生む『働かせ方』のチェックリスト」から何を学ぶべきなのか。

役員会はブラックボックスのまま

政府が「働き方改革」を唱え、それに応じる形で多くの企業が様々な取り組みをしている。「労働時間を削減し、有給休暇の消化率を上げる」「育児や介護の休業などの態勢を整える」「女性の管理職や役員を増やす」--。いずれもが、日本企業にとって長年の課題であったものだ。

これらの試みを肯定しながらも、そのあり方や進め方に問題を提起しているのが、組織風土改革のパイオニアであるスコラ・コンサルトだ。1980年代半ばに「大企業病」が指摘された頃から、2000件近くの企業、公的機関の組織改革を支援してきた。パフォーマンスに大きな影響を及ぼす風土・体質に着眼し、クライアントと一緒に考え、組織のイノベーションを図ることで知られる。パートナープロセスデザイナーである宮入小夜子氏に「働き方改革」などをテーマに取材をした。

宮入小夜子 スコラ・コンサルト パートナープロセスデザイナー、開智国際大学(国際教養学部)教授。

宮入氏は「働き方改革をいわば、葵の御門のように使うことで長年の懸案であった課題が解決されることは歓迎です」と切り出し、こう続ける。

「特に大企業などの社員は以前よりは残業時間が減り、有給休暇を申請しやすくはなっています。しかし、実はこれらは、業務改善などの結果ではないのです。私たちがコンサルティングをしていると、多くの社員の仕事の進め方や量は大きくは変わっていないことに気がつきます。社員に仕事を指示する側の役員や管理職の意識、考え方の改革が進んでいないのです。特に役員の意識が変わっていかない点に問題があります。

長年、「あうんの呼吸」が求められた日本企業では、部下にとって上層部の言動は大きな影響力を持っています。些細な投げかけまでも含めた指示によって仕事が発生することがあまり問題視されてきませんでした。

働き方改革でも役員会にメスが入れられることはなく、ブラックボックスのままであり、問題が温存されています。だからこそ、私たちは役員の方々に、"働き方の問題は、あなたたちからも生まれているのですよ"と機会あるごとに話しているのです」

スコラ・コンサルトのこの投げかけは役員を批判したり、告発するものではない。パフォーマンスに影響を及ぼす風土を変えるためにどうするべきかと合理的に考えると、役員に目を向けていかざるを得ないと考えているのだ。