役員会は「話し合わないグループ」

宮入氏は、会長、社長、役員たちが1つの事案に関して話す内容がそれぞれ異なり、管理職への指示が違ったものとなり、指示命令も錯綜している場合があると指摘する。

特に大企業などの役員会は、宮入氏いわく、「話し合わないグループ」なのだという。社内外の課題や問題に対し、役員(取締役)たちが本音で真摯に議論する機会が少なく、むしろ、互いにそれを避けている雰囲気があるようだ。

「多くの役員の方は、ご自身のキャリアや実績に自信をもっておられます。部門を預かるトップとしての責任意識も強い。そのためか、全体としての共通の目的のもとに他の役員の方たちと向き合って深い議論をしようとはしないのです。役員同士がそれぞれ自部門の利益を守ろうとして、牽制関係になっていることのほうが多いのではないでしょうか。

部門管掌の役員同士が一枚岩になっていない場合は、組織の縦割り意識が強くなります。それによって、部門間連携が進まなかったり、役員発の似たような取り組みが複数部署で行なわれたりと、職場側での非効率やムダ、全体最適視点での生産性の悪さを生んでしまうのです」

多くの役員同士は、問題や弱みを互いに見せないようにする間柄である。お互いに「余計なことは言わない、しない」といった相互不可侵の状態で、相手の領域に踏み込んで話をすることもない。上の意向に従う部下たちも、自部署のことしか考えなくなる。

宮入氏は、社長以下、役員たちはこれらの実態に気がついているとコンサルティングを通じて感じ取っている。しかし、「この問題の根深さを見過ごしている役員が少なくない」と問題を提起する。「働き方改革」を役員のあり方を変えていくきっかけにしていくべきとも説く。

「これまでのマネジメントを見直すチャンスとして、働き方改革の"方"に着眼し、管理職、役員も社員と一緒に変わることが必要です。役員にしろ、管理職にしろ、ひとりではパフォーマンスを上げることができない時代になりつつあります。これを機に、チームとして最大の効果が上がるような組織にするべきなのではないでしょうか。

働き方改革は、組織風土改革と表裏一体のものとして進めなければ効果が上がらないと私たちは考えています。ムダな保険仕事や忖度仕事は、上司自身が"働かせ方"を見直すことで、すぐにでも削減できるのではないかと思います。社員に仕事のしかたを見直せとハッパをかけている『あなたこそがムダに仕事を増やしていませんか?』ということなのです」