働き方改革は原則「副業・兼業を認める方針」
社員の副業を推進する動きが、官民で盛り上がっている。
政府は今年3月、長時間労働の是正や同一労働同一賃金の導入を盛り込んだ「働き方改革実行計画」を発表した。その中に「副業・兼業の推進に向けたガイドラインや改訂版モデル就業規則の策定」という項目があり、こう述べている。
「副業・兼業を希望する方は、近年増加している一方で、これを認める企業は少ない。労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業・兼業を認める方向で、副業・兼業の普及促進を図る」
本来は、労働契約によって定められた就業時間のみ労務の提供義務を負うのが原則。会社に正当な理由がない限り、就業時間以外の時間をどのように使うかは労働者本人の自由なはずだ。だが、実行計画が指摘するように、実際は会社の法律である「就業規則」で副業を禁止している企業が多い。
兼業・副業を認めない企業は85.3%
中小企業庁の調査(「兼業・副業に係る取組み実態調査」2014年)によれば、兼業・副業を認めていない企業は85.3%と圧倒的多数を占める。また、厚生労働省のモデル就業規則にも「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」と記載されている。
モデル就業規則の規定は多くの会社の実態にのっとったものだが、なぜ会社は就業時間以外の副業を禁止しているのか。主な理由は本業に支障をきたしたり、会社の秘密を競合他社に漏らしたりすることを防ぐためだとされる。さらに、会社に忠節を尽くして働いてほしいという終身雇用下の日本的雇用慣行が背景にあるといわれる。
なんとなくわからないではない。だが、それならばなぜ、政府は副業の推進を叫んでいるのだろうか?
最大の理由は、成長戦略として経済成長の後押しを狙っているからである。副業推進の具体的な効果として、イノベーションの促進、人材確保、人材育成、可処分所得の増加、創業の推進、労働市場の流動化などを挙げている。
つまり、優秀な人材が持つ技能を他社でも活用することが新事業の創出などにつながり、人材を分け合うことで人材確保にも寄与する。社員にとっても、他社で働くことで自社にはないスキルを獲得し、キャリアアップにつながり、副業をきっかけに起業する人も増えて、なおかつ収入も増える。会社と社員双方にメリットがあり、ひいては経済成長にも寄与するというものだ。