部下の仕事を増やす上司の言動とは

同社のスタッフが長年のコンサルティング経験をもとに、今年2月に発表したのが、「部下の仕事を増やす上司の言動<あるあるチェックリスト>」である。この場合の上司とは管理職や役員であるが、特に大企業などの役員を想定して作ったのだという。

<あるあるチェックリスト>では、管理職や役員の言動、特に部下への働かせ方などを10個ほど挙げている。それぞれに「頻繁にある」(4点)、「たまにある」(3点)、「ほとんどない」(2点)、「まったくない」(1点)と答える。10個の回答の合計点から、マネジメントや業務フロー、管理職や役員の意識や考え方の問題点に気づいてもらうことが目的である。

それとあわせて、「上司の『無意識の指示』による『忖度(そんたく)仕事』10選」をまとめた。

「無意識の指示による忖度仕事」とは、たとえば、役員が明確な指示をわかりやすく伝えないために、管理職が役員の意向をくみ取ったり、推し量ったりして仕事をすることである。これが、一般社員(非管理職)にもムリ・ムダな仕事をさせることになると指摘する。参考までに10選のうち、2つを以下に挙げる。

・「もしかしたら聞かれるかもしれない」ことを想定して資料をあれこれ準備する。会議の前には担当者が部長や役員に細かく説明する。
・指示の意図や目的が不明確なため、それらしき数字(データ)をとりあえず調べ上げる。目的に対する効果よりも、インプットに対するアウトプットをその場しのぎで考える。

良かれと思って不必要なレベルまで過剰に準備し、そこに120%の力を注いでいる"仕事"がある。このように業務のあり方に問題がありながら、改革が進まない理由の1つとして同社は「負の因果関係」を指摘する。たとえば、1から7までの一連の流れが負の因果関係である。

1.「上司を立てる」「上司の意向を重んじる」ことが強く尊重される組織風土
2.「経営の賛同を得られるか」「上司が説明・返答できるか」など仕事の意味や目的よりも手続き的な円滑さが重視される
3.「保険仕事が増える」(根回しや本来、必要のない詳細な資料作りなど)
4.「意味を感じにくいが、やらなければいけない仕事にさらに忙殺される」
5.「業務を細分化して、個々ががんばるというスタイルをさらに強化することで、乗り切ろうとする」
6.「一人ひとりががんばってなんとか仕事をさばく」
7.「担当の業務以外のことに関心を持ちにくくなる」(経営的視野、全体最適的視点、連帯や協働など)

本来は、この流れを断ち切り、組織として健全に機能するようにリードしていくのが、社長以下、役員なのだ。