猶予期間に断行すべき3つのこと
このままでは、2020年になった時、中小企業は目前に迫った猶予期間の終わりを前に立ち往生し、新規学卒の採用もままならない上、若年層が流出するという状況になる。大企業に対するアドバンテージになっていた状況はなくなり、同じ条件で戦わなくてはならない時が来る。中小企業にとっては最悪のシナリオだ。
これは、多くの中小企業にとって他人事ではない話だろう。ではどうすればいいのか。働き方改革の取り組みを進めてきた企業を参考に打開策を考えよう。
「猶予期間はない」と考え、いますぐ本格的な対策を進めることが必要だ。しかも、働き方改革は徐々に進められるものではなく、一気にやらなくては成果が望めない。
働き方改革を具体的に進める上で必要なことは3つある。ひとつは経営トップのリーダーシップ、ふたつ目はハードウェア的なロック、最後はソフト面での変革だ。ひとつずつ考えていこう。
はじめは、最も重要な経営トップのリーダーシップ。私のクライアントの中には、経営トップが「当社は働き方改革を進める。そのためには、来期5%の売上げダウンも許容する」と宣言したケースがある。そこまで言われれば社員側も「これは本気だ」と感じて取り組みを進めるだろう。
一方、「業績アップが最優先だ。働き方改革は進めるが、やり方は君たちで考えろ」という指示だったら、社員は内心「そんなこと無理に決まっている」と感じ、具体的な動きは起こらず、働き方改革が進まず、前述の最悪のシナリオに進む可能性がある。なによりも、トップが働き方改革に向けた覚悟を示すことが大切なのだ。
次に必要なことがハードウェア的なロックである。「業務を効率化しよう」「早く帰ろう」というかけ声だけでは、話は進まない。19時になったら、サーバーへのアクセスを遮断する、といった措置が必要になる。これには、実施を予告した段階で社内の猛反発が起こることが予想される。対策として、「どうしても19時以降もサーバーへのアクセスが必要な部門は社長に直接申請すること」というルールにした企業があった。結果はどこからもそういう申請は出なかったということだった。このように、ある程度強制的に帰らざるを得ない状況にする必要がある。