※本稿は、「プレジデントウーマン」(2018年7月号)の掲載記事を再編集したものです。
おなかの張りや下腹部痛は、念のため産婦人科の受診を
卵巣がんは40代後半以上の女性に多いものの、20代、30代でも発症する人がいる。特に自覚症状がないのに、突然進行した状態で見つかることが多いため、サイレントキラー(無言の殺人者)と呼ばれる。
「卵巣がんには、チョコレートのう胞という良性の病気ががん化するタイプと、突然大きくなるタイプがあります。急に進行するタイプの卵巣がんは、患者さんが『おなかが張る』『下腹部が痛い』と訴えて受診したときには、腹膜にがん細胞が散っていることも少なくありません」
がん研有明病院婦人科部長の竹島信宏医師は、そう指摘する。チョコレートのう胞は、子宮の内面を覆う子宮内膜の組織が卵巣に発生し、月経の周期ごとに出血を繰り返す病気。血液が卵巣にたまってチョコレート色の袋ができるためこの病名がついた。のう胞が大きいほど、また、閉経後にがん化するリスクが高まる。
卵巣がんとわかったときには、手術で、両方の卵管・卵巣と子宮、大網(腹部を覆っている脂肪組織)と、必要に応じて骨盤や大動脈のそばのリンパ節を切除する。また、がんが、腹膜、肝臓、大網、小腸、周囲のリンパ節や離れた臓器へ転移している場合には、手術と薬物療法を組み合わせた治療を行う。
「卵巣がんは、進行していても、できるだけ手術で腫瘍を取り除くことが重要です。がんの広がり方によっては、肝臓、小腸、大腸など周囲の臓器を切除するような専門的な手術が必要になる場合も。卵巣がんの疑いがあるときには、卵巣がんの手術症例数が多い病院を選ぶことが大切です」と竹島医師は強調する。
DPCのデータを集計し、卵巣がんの手術症例数が多い50位までの病院をリストアップしたのがの表である。症例数が多い病院は、薬物療法の専門医や病理医など、卵巣がん治療に詳しい専門家がそろっている可能性も高い。
卵巣がん治療の最近のトピックは、PARP阻害薬と呼ばれる新しいタイプの薬が2018年4月に承認され、再発卵巣がんの治療の選択肢が増えたこと。特に遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の患者は、PARP阻害薬の効果が高いという報告がある。
「HBOCは卵巣がん患者の5%程度と考えられていましたが、最近の研究で20%くらいいるとわかってきました。血縁者に乳がん、卵巣がんが多い人は、遺伝カウンセリングを受けましょう。また、健康診断などで異常がないとされていても、おなかの張りや下腹部痛を感じたら卵巣がんかもしれないので産婦人科を受診してください」(竹島医師)