「英語のスピーキング上達法」の第3回目は、TOEIC(R)L&Rテストのスコアが700点レベルの方にフォーカスした学習法です。英語で仕事ができるビジネスパーソンを目指し、松本 茂先生に教えていただこう。
立教大学教授
松本 茂(まつもと・しげる)

マサチューセッツ大学ディベートコーチ、東海大学教授などを経て、現在、立教大学経営学部国際経営学科教授、同学科バイリンガル・ビジネスリーダー・プログラム主査、同大学グローバル教育センター長。著作に『速読速聴・英単語』シリーズ(Z会)、『CD BOOK おとなの基礎英語 ニューヨーク・ロンドン編』(NHK出版)など。

ビジネスパーソンの英語スピーキング上達法特別講座も、いよいよ中級の上のレベルに突入です。TOEIC(R)L&Rテストのスコアが700点レベルであっても、英語を話せなければ、海外での仕事にも支障をきたし、昇進にも悪影響が出る可能性があります。では、どの程度の力が必要なのでしょうか。

欧州では、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR:Common European Framework of Reference)が、英語力を測るものさしとして用いられています。この基準における中級のB1レベルは、TOEIC(R)L&Rテストのスコアとしては、550~780点に相当します。

そして、もう一つ上のB2レベルになると、TOEIC(R)L&Rテストのスコアは785~940点相当です。

TOEIC(R)L&Rテストでの点数には幅はありますが、基本的にはB2レベル以上になると、専門分野の議論ができ、複雑な文の内容を理解し、ネイティブスピーカーとも自然なやりとりができるとされています。いずれにしても、このレベルに到達しているかどうかを知るためには、TOEIC(R)L&Rテストだけでなく、S&W (Speaking & Writing)テストも受けることをおすすめします。

では、B2レベルの英語力を目指す人たちは、どのような勉強をすればいいのでしょうか。

語彙力を磨け!
専門用語を含め、6000語をマスターする

これまでは自分が話せるトピックを増やすことに力を注いでいればよかったのですが、ここから先は、それでは足りません。

まず意識したいのは「語彙力」です。日本の高校卒業時点での語彙数は5000語とされています。それに加えて、ビジネスパーソンであれば、それぞれの業界で必要となる特有の語彙が1000~1500語。つまり、少なく見積もっても、6000語の語彙が必要です。これがB2レベルの語彙数です。

はっきりと大きな声で話し、ジェスチャーを交じえて話せば、外国の人たちとの会話が成立することが多いですよね。しかし、語彙力がないと込み入った話は難しい。やはり、ビジネスに使う語彙もある程度は必要になります。

この語彙力を増やすにはどうしたらよいでしょう。効果的なのは、NIKKEI Asian Reviewなどの英字新聞のサイトを常にチェックして、英文を読みながら単語をインプットしていくことです。「beef up=強化する」というように、単語・熟語と日本語の語義を一対一で無理やり記憶するのではなく、記事の文脈の中で意味を把握して定着させる。「文脈主義」で必要となる単語を覚えていけば、使える英語力を身につけられるようになります。

論理的に話す!
相手を納得させる話の展開を組み立てる

ビジネスパーソンが英語で説明したり、質問したり、議論したりするためには、語彙力だけでは十分ではありません。

では、何が必要か。それは、論理的に話す力です。英語が上手でも、仕事の成果があまり上がらない人がいますが、それは話を論理的に組み立てられていないのが原因である可能性が高いです。ビジネスでは、聞いている人たちにも納得してもらわないといけない。日本人同士であれば、言葉にしなくても通じる部分もあるかもしれませんが、異文化の人が相手の場合は、常に論理的に考え、話すことが必要です。その力がないと、ビジネスにおいて効果的にコミュニケーションを展開することは難しいのです。

論理的な構成力を身につけるには、ロジカルスピーキングやディベートなどの研修が有効です。基本を学んだら、ランチタイムには、仲間とランチを食べながら経済問題などについて英語で意見交換をするとよいでしょう。

1日3時間!
一石二鳥を目指し英語学習を継続する

そして、ここから先は、ただ、やるのみ。英語学習も他の習い事やスポーツと基本は同じで、「徹底力」です。

上達の基本は、とにかく「学習量」を増やすこと。通勤時間などのスキマ時間や、食事のときなどのナガラ時間を有効に使って、英語を聴いて口マネしたり、読んだり、書いたりと、とにかく英語に触れる。目安は、1日2~3時間。これを地道に続けると、3カ月で変化が起こり始めます。そして、1年で一つ上のレベルの英語力が身につきます。

では、1日3時間、どう頑張るか? 逆説的ですが、できるだけ「頑張らないようにする」というのが成功への鍵です。

英字新聞を読んで自分が担当している国や地域の情報を収集すれば、仕事内容と英語学習の一石二鳥。

好きな外国人スポーツ選手のブログやツイッターを読んだり、「TED Talks」の中から自分の興味のあるテーマのスピーチを聴いて、最新の話題に触れながら英語を聴くのも有効です。楽みながら学べて一石二鳥。

つまり、英語を「学ぶ」(learn)より、「使う」(use)ことで親しむのです。そして、肝心なのはモチベーションを維持すること。

教材選びにしても、聴くことが苦手なら、少しやさしめの教材から始めるなど工夫をして、続けやすい方法をとりましょう。こうやって継続していけば、楽しみながら英語力を伸ばしていけます。異文化の人たちを相手に、自分の仕事や趣味のことを積極的に、しっかりと説明できるようになるのです。

そして、さらに上を目指す人は、「通じればいい」からの脱却。より格調高い、正確な英語を使えるようにしましょう。現地法人を率いるような立場の人に求められるのは、ラインで働く人たちの英語よりも教養が感じられる英語です。そのため、正しい文法や婉曲的な表現も使いこなせるようになる必要があります。

ロジカルに考え、相手と良い関係性をつくりつつ、英語でも効果的に情報や意見を伝えられるビジネスパーソンを目指しましょう!

(大竹 聡=取材・文 中林 香=撮影)