「内部告発」専門家4人の本音トーク
【鬼塚】横領金の裁判は多いですか?
【山岸】ものすごく多いです。中小企業の「番頭さん」はかなりの確率で横領しています。
【林】少額の経費くらいだったら、している例は多いかもしれませんね。中小企業の中には結構お金持ちもいるので、3000万円とか5000万円とかの横領もあるかも?
【丸尾】1億っていうのもありましたね。経理の女性が何年も少額をコツコツ使っていて……。
【鬼塚】発覚はどうやって?
【山岸】会計監査が入ったり、会計事務所が見つけたりすることが多いですね。
【丸尾】不審な領収書が見つかったり、高級下着が女性の家に届けられていたりとか。
【林】業種によって「こういう費用は発生しないはず」というのがあるので、「おかしい!」となりますよね。領収書は品代にしていても、払ったお店の名前から内容がわかることがあります。インターネット通販だと、品名なんかも詳しく出ているので、わかりやすいですね。
【山岸】架空の会社をつくってそこに振り込むことにして自分のポケットに入れちゃうとか。実体のない取引があったり。
【林】領収書の改竄も、経理の人の筆跡に似ていたり、無理にゼロを足していたり、不自然なんです。
【鬼塚】ちなみに、会社経営者や役員の場合、横領のような業務上の問題が起きると、株主など第三者から訴えられるリスクがあります。そうしたリスクへの備えとして、損害賠償や裁判費用を負担する「会社役員賠償責任保険」という保険商品があります。大企業は大抵入っていますが、中小企業の場合は加入を確認しておくと安心です。「横領された!」として訴えても、横領されたお金はまずかえってこないんですけどね……。
【山岸】横領した人は、解雇されて、損害賠償請求をされます。一括で払えないことが多いのですが、分割で払おうとしてもさらに遅延損害金がつくので、まず返せない。そうすると自己破産するケースもあります。会社は損金で落として損失を認められるという形になります。
【丸尾】今回のケースでは、派遣先の上司がいい方ということなので、上司にこっそり耳打ちするのがいいかもしれませんね。
弁護士、税理士、社会保険労務士、FP、金融関係者、医師、不動産関係者、介護福祉関係者、不用品回収業者、印刷業者など、それぞれに活躍する実務経験豊富な各分野の専門家で構成。契約企業に出向き、介護・事業承継・相続問題のほか、夫婦・家族の問題などに悩む社員の個別相談にワンストップ・ワンテーブルで対応。セミナー研修などを行っている。
鬼塚眞子
一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表理事・FP。大手雑誌社勤務後、出産のために退職・専業主婦に。その後大手生命保険会社の営業職として社会復帰。業界紙記者を経て、保険ジャーナリスト、FPとして独立。認知症の両親の遠距離介護を機に、同協会を設立した。
丸尾はるな
弁護士。弁護士登録7年目で独立し、「丸尾総合法律事務所」開設。弁護士歴約10年でありながら、個人の一般民事事件、家事事件、企業の法律相談、訴訟案件など、幅広い相談に対応し、時代にあわせたサポートを行う。
山岸潤子
弁護士。仕事と子育てを両立する、弁護士歴約20年のベテラン。非常勤裁判官経験もあり、現在は東京家庭裁判所調停委員も務める。子どもの権利委員会、少年法委員会、男女共同参画推進プロジェクトチームほか、多くの弁護士会の活動にも携わる。
林 良子
税理士。一般企業の経理などをしながら税理士試験に合格。現在は内山・渡邉税理士法人の社員税理士であり、租税教育の講師も行う。得意分野は資産税(相続税・譲渡所得税)を中心とした税務コンサルティング、法人税、所得税の節税対策。
編集・構成=干川美奈子 撮影=干川 修