地震の揺れの周期と建物の固有周期の関係

しかし、どちらのタイプがより安心、という話ではない。ここで注目しなければならないのが、地震の周期と建物の周期との関連なのだ。朽木氏が続ける。

「地震の1回の揺れにかかる時間を周期といいます。これが0.3秒から0.6秒くらいの間の、比較的に周期の短い揺れで住宅が倒壊する危険がある。実は、建物にも高さや構造によって1回の揺れにかかる時間が決まっていて、これを固有周期というのですが、木造2階建てのごく一般的な住宅では、0.3~0.6秒くらいの周期の家が多いのです」

つまり、地震の周期と建物の固有周期とが一致する。このとき起こるのが「共振」という現象で、わかりやすくいえば、波長が合って、揺れが増大するのである。建物の固有周期に合った揺れが起これば、共振して家は倒壊しやすくなる。そういう理解でいいのだろう。朽木氏も言う。

「高層ビルの固有周期は長い。そこに周期の長い地震が共振を起こすと、東日本大震災のときのようにビルがしなうような大きな揺れを引き起こします。同じように、周期の短い揺れと固有周期が短い木造2階建て住宅の周期が一致すれば、揺れは大きくなります」

現時点でわかっていることは、地震の周期は、長いよりも、短いほうが建物に与える影響が強いということ。では、周期の長い地震と短い地震を選別して備えることはできるのだろうか。言いかえれば、家屋倒壊という最大の被害を防ぐために、短い周期の地震が起きにくい場所を探すことは可能か、ということだ。

「地震には、短い周期と、長い周期の、両方が混ざっているんですよ」

つまり、巨大地震がひとたび起これば、揺れの周期は長いものも短いものも含まれるということだ。地震の揺れは均一ではないのだ。

となれば、長い周期の揺れは、固有周期の長い高層の建物と共振して大きな揺れを発生させ、短い周期の揺れは固有周期の短い住宅と共振して、やはり揺れを増大させる。共振という現象に逃げ道はないということだ。

衝撃を吸収する制震装置

では、いかなる対策が可能なのか。朽木氏にさらに訊いた。

「現在は3段階に分かれている住宅の耐震等級を高めることが注目されています。もうひとつは、制震装置をつけることです。例えば、壁のゆがみを抑制するためにつけるダンパーという装置があります。これによって、長方形の壁が平行四辺形にゆがむことを抑制できる。すでに建っている住宅にも、コストはかかりますが装着可能です」

ダンパーというのは、有り体に言えばショックアブソーバー。衝撃を吸収する装置で、共振によって増大した揺れの影響を軽減する。

大地震に見舞われても家を守る手立てはどこかにある。すべてを一挙に解決する策ではなくても、まずは地震を知り、建物を知ることから、安心への第一歩を歩み始めたい。

(大竹 聡=文)