家族全員が成長できるチャンス

【河崎環さんの回答】

本当は、ご相談者の心の中では答えが決まっていらっしゃるのではありませんか? 条件的には十分に整っている、というのは、それをここに並べてくださったご相談者自身もよくお分かりのはず。あとはご自身が踏ん切れるかどうか、飛べるかどうかだけのことですよね。

これを機にドーンと旦那さんの背中を押し、スパッと生活を変えちゃいましょう! 旦那さんは能力面も性格面も信頼できる人で、しっかりとした事業計画もあり、資金の目処も付いている。しかも奥様に正社員としてのきちんとした稼ぎがあることで、家計についても“どうにかなる”。文句のつけどころがありません。

家事を分担したり、お子さんと過ごしたりする時間がなくなるのではないかという懸念があるのですね。“家庭を顧みる時間と余裕がなくなる”とおっしゃるあたり、きっとこれまで奥様が正社員として働きながらも仕事と家庭のバランスを取るために心を砕いてこられたのでしょう。その「きちんと取り組んできた」事実の蓄積が既にあるのであれば、ご家族全体の総意を形成するために「お父さんが会社の社長になるのよ。ちょっとここで、新しいライフスタイルをやってみようか?」とお子さんに持ちかけるのはアリで、十分に理解されるだけの素地と信頼があると思われます。

当面の実質的な稼ぎ頭が奥さんの側になるということで、家庭の仕事はどんどん旦那さんや、いままさに成長しているお子さんへと移譲していきましょう。それは家族メンバーそれぞれの成長と自立を促すことにもなります。炊事・洗濯・掃除といった自分の基本的な生活上の自立は、お子さんの教育上の効果が非常に高く、ワーママにとって、家事分担とは恐れずに手放していくほうがいいものなのです。一方で、メールやSNSを活用したり、休日など、時間的に許されるならば一緒に何かに取り組んだり、お子さんの心に寄り添うことだけは意識的に行っていきましょう。

家族には、全員で一緒にチャレンジする場面があっていいと思います。その経験がいわゆる本当の“絆”なるものを生むのです。

女性回答者プロフィール:河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。

文=本田健、河崎環 イラスト=伊野孝行