仕事、家庭生活、お金、親子関係……、さまざまなお悩みに、100冊以上の著作を誇る作家の本田健さんと、PRESIDENT WOMAN Onlineの連載「WOMAN千夜一夜物語」でおなじみのコラムニスト河崎環さんが回答する人生相談、今回は「起業希望の夫」についてのご相談です。

【今回のご相談】
会社員の夫が起業したいと言い出しました。事業計画を聞くと浮ついたものではなく、資金の目処も付けています。成功するかどうかは分かりませんが、夫の能力と性格を考えると、粘り強く取り組むだろうと思います。私が正社員として働いているため、家計についても当面はなんとかなるのですが、家事を分担したり子供と過ごしたりというような、家庭を顧みる時間と余裕が全くなくなりそうで不安です。夫の背中を押すべきか、踏みとどまらせるべきか迷っています。
準備万端の起業計画、立案者が友人知人なら諸手を挙げて応援したくなりますが、相手が夫となると、話は別です。(イラスト=伊野孝行)

失敗時の撤退まで、徹底的に話し合いを

【本田健さんの回答】

悩ましい選択ですね。従業員の妻として生きるのか、経営者の妻として生きるのかでは、全然違った生き方になります。従業員は、安定的に収入をもらえるのに比べて、経営者は、事業に失敗すると財産を失ってしまいます。もちろん、成功すれば、従業員では考えられないような収入を得られることもあります。

そういう意味で、ハイリスク、ハイリターンなのが経営者だとしたら、安心できるけど、やや退屈なのが従業員です。

現在、あなたも従業員として仕事をしているのであれば、旦那さんが経営者になっても、当面のお金の不安はないでしょう。もし、旦那さんの才能を信じているのなら、大きく賭けてみるのもありだと思います。事業計画、資金などの目処を立てていたら、独立して思考する道も見えてくるでしょう。

人生、いろんな楽しみ方があります。安定、安全の生き方もあるし、リスクを冒しても、夢に挑戦するというのも、素敵な生き方です。

最終的に意志決定する前に、お二人でいろいろと話すといいでしょう。なぜ起業するのかという動機、事業の方向性、どのぐらいの規模でやりたいのかなどを話し合ってみてください。また、事業がうまくいかなかった場合には、どう撤退するのかということまで話していくことが大切です。最初から失敗することをイメージするなんて、縁起が悪いと感じるかもしれません。でも、引き際も大事です。ダメになっても、上手にこけることができれば、また復活の道もあるからです。

男性回答者プロフィール:本田健(ほんだ・けん)
作家。神戸生まれ。経営コンサルタント、投資家を経て、29歳で育児セミリタイヤ生活に入る。4年の育児生活中に作家になるビジョンを得て、執筆活動をスタートする。「お金と幸せ」をテーマにした1000人規模の講演会、セミナーを全国で開催。インターネットラジオ「本田健の人生相談~Dear Ken~」は2200万ダウンロードを記録。
代表作『ユダヤ人大富豪の教え』(大和書房刊)など、これまでに著書は100冊以上、累計発行部数は680万部を突破。
【本田 健 公式サイト】http://www.aiueoffice.com/

家族全員が成長できるチャンス

【河崎環さんの回答】

本当は、ご相談者の心の中では答えが決まっていらっしゃるのではありませんか? 条件的には十分に整っている、というのは、それをここに並べてくださったご相談者自身もよくお分かりのはず。あとはご自身が踏ん切れるかどうか、飛べるかどうかだけのことですよね。

これを機にドーンと旦那さんの背中を押し、スパッと生活を変えちゃいましょう! 旦那さんは能力面も性格面も信頼できる人で、しっかりとした事業計画もあり、資金の目処も付いている。しかも奥様に正社員としてのきちんとした稼ぎがあることで、家計についても“どうにかなる”。文句のつけどころがありません。

家事を分担したり、お子さんと過ごしたりする時間がなくなるのではないかという懸念があるのですね。“家庭を顧みる時間と余裕がなくなる”とおっしゃるあたり、きっとこれまで奥様が正社員として働きながらも仕事と家庭のバランスを取るために心を砕いてこられたのでしょう。その「きちんと取り組んできた」事実の蓄積が既にあるのであれば、ご家族全体の総意を形成するために「お父さんが会社の社長になるのよ。ちょっとここで、新しいライフスタイルをやってみようか?」とお子さんに持ちかけるのはアリで、十分に理解されるだけの素地と信頼があると思われます。

当面の実質的な稼ぎ頭が奥さんの側になるということで、家庭の仕事はどんどん旦那さんや、いままさに成長しているお子さんへと移譲していきましょう。それは家族メンバーそれぞれの成長と自立を促すことにもなります。炊事・洗濯・掃除といった自分の基本的な生活上の自立は、お子さんの教育上の効果が非常に高く、ワーママにとって、家事分担とは恐れずに手放していくほうがいいものなのです。一方で、メールやSNSを活用したり、休日など、時間的に許されるならば一緒に何かに取り組んだり、お子さんの心に寄り添うことだけは意識的に行っていきましょう。

家族には、全員で一緒にチャレンジする場面があっていいと思います。その経験がいわゆる本当の“絆”なるものを生むのです。

女性回答者プロフィール:河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。