企業理念に立ち返り、販路縮小へ

タイ・チェンマイにある直営第1号店。オーガイックコットンを使用したベビー用品など、寝具中心だった創業時から商品数も増えてきている。

プラネッタ・オーガニカのシーツは1枚2万円前後。タイの物価を考えるとかなりの高価格製品だが、品質に対する評価が高く、卸先は、欧米や日本女性にも人気が高い「パンピューリ スパ」といった一流どころのスパやホテルが中心だ。

取引のオファーも多い。だが、嶋田さんは慎重に販路を絞り、生産量を抑えている。「タイの織り場に大企業が入り込み、大量発注が舞い込んだものの、その翌年には注文がゼロになり、つぶれた織り場をいくつも見てきました。私はクオリティーを保った製品を安定して生産していきたい。心を込めて手織りしているのに、セールで安売りされたり、売れなかったからといって破棄処分されるのは納得がいかないですからね」

日本でのチャネル開拓を進めるために、2006年からはいくつかの販売代理店を通して、日本の百貨店でのイベントやギフトショーといった展示会にも出展していたが、6年後の2012年に手を引いた。代理店と嶋田さんとの方向性の違いゆえだ。

草木染めの糸は風合いもよく、使い込むほどになじんでいく。写真下は人気のフェイスタオル。

プラネッタ・オーガニカは、オーガニックコットンのブランドと思われがちだが、厳密にいうとそうではない。伝統的な手織りや草木染めといった手法を突き詰めていった先に出会ったのがオーガニックコットン。「まず伝統的な手法ありき」のブランドなのだ。

「取引先のあるアパレル会社から『プラネッタ・オーガニカは全てオーガニックの製品なんですよね?』と尋ねられたことがあります。代理店がそのように伝えていたからですが、ブランドの成り立ちや材料や製法へのこだわりについて、直接、丁寧にお話した上で、全てがオーガニックではないことをお伝えすると分かっていただけるんですよ

代理店からすれば『オーガニックコットンのブランド』といった方が話が早く、売り込みやすい。ビジネスを優先させるためには仕方がないこととはいえ、ロジックとしてオーガニックコットンだけを前面に出されるのは不本意。毎シーズンのように新製品を求められるのも、準備に追われ大変な負担でした」

嶋田さんが日本での前述のようなギャップを憂慮する一方で、代理店の取り組みを通して、日本ではプラネッタ・オーガニカファンが着実に増えていた。イベントを行えば確実な集客が見込めるため、百貨店でのイベントは1回あたり100万円以上の売り上げがあることも多かったそうだ。ビジネス規模だけを追求すれば、このチャネルを手放す選択肢はない。

だが、それはプラネッタ・オーガニカにとって良いことなのか。自分がやりたかったことなのか。嶋田さんは覚悟を決めた。事業は縮小しても構わない。守るべきはブランドの本質だ。代理店契約を打ち切った後、約1年かけて取引先にあいさつに回り、状況を説明。了承を得た。