軽減税率導入で家計はどう変わる?
日本の消費税の前身は、戦前から続いていた「物品税」だ。物品税は、いわゆるぜいたく品に重く課税する。しかし、ぜいたく品と判断してリストアップするには時間がかかり、企業の商品開発に大きく遅れることになる。税収は下降の一途を辿っていた。
そこで、物品税を廃止して、消費税に移行したわけだ。消費税は、医療や教育といった特定分野の非課税を除き、一つの税率で課税するので、人々の消費に対して公平であり、商品やサービスの価格に中立だ。課税庁と事業者の双方でコストが少なく、多くの税収を確保することができる。
機能不全に陥ったオールドVATの教訓に学び、物品税を捨てた歴史を想起すれば、日本が欧州型の軽減税率を導入することは難しい。軽減税率を持つ国の標準税率は20%程度が普通であり、日本が、10%の標準税率でわずかに低い8%の軽減税率を設定すれば、世界でも珍しい奇妙なデザインということになってしまう。
財務省は、先ごろ、「日本型軽減税率制度」を発案した。飲食料品の買い物のたびにマイナンバーカードを使ってポイントを蓄積し、後日2%の還付を受けるというものだ。欧州型の軽減税率に対抗するアイデアだが、現実性が乏しいと酷評されている。
どのような“型”であれ、軽減税率の導入が日本の消費税にとってターニングポイントであることは間違いない。
税理士、近畿大学大学院法学研究科非常勤講師。『一夜漬け消費税』など著書多数。全国で講演活動を行う。1989年に結婚。3女の母。
イラスト=Yooco Tanimoto