わたしたちの未来の暮らしには、少子高齢化、経済成長鈍化がもたらす不安要素が山積み……。フランスの経済学者であるトマ・ピケティ氏が、著書『21世紀の資本』で格差の拡大を予言したように、“資産を持つ者”“持たぬ者”の格差はますます拡大すると予測されています。格差の負け組である「スーパープア」にならないために、今私たちがすべきこととは何でしょう? マクロエコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに意見を聞きました。
昨年から頻繁に見聞きするようになった「格差の拡大」というトピック。火付け役になったのは、経済学者トマ・ピケティ氏が著した、『21世紀の資本』という本でした。
『21世紀の資本』は、フランス人経済学者トマ・ピケティ氏の著書。経済専門書にもかかわらず、世界で100万部以上という異例の売り上げを記録した。主な内容は、簡単にいうと世界各国の長期的な税務統計の分析。分析の結果、「r(資本の収益率)>g(経済成長率)」という方程式が導き出されている。これはつまり、“資本を持っている人はその資本をどんどん運用などで大きくしていけるが、その他の人は経済成長と同程度の生活水準しか期待できない(=格差拡大)”ということを示唆している。
かつての日本は「1億総中流社会」といわれ、貧困層(スーパープア)とされる人は少数でした。しかし、格差が広がれば必然的に大金持ち(スーパーリッチ) とスーパープアが増えるはずです。
本当にそんな両極端な世の中になってしまうのでしょうか? マクロエコノミストの崔真淑さんは、次のように指摘します。
「ピケティさんの指摘どおり、格差が広がる可能性は高いでしょう。日本は経済的に成熟しているので、今後は低成長時代が続きます。そうなれば株式や債券などへの投資による収益率、ピケティさんいうところの『r』が、経済成長率、いわゆる『g』を上回るのは当たり前の話。ですから、資本を持つ人がそれを運用で順調に増やせばスーパーリッチになるでしょうし、それをしない人がお金を増やせず、スーパーリッチと格差が開くのは仕方ありません」
しかも、日本は少子高齢化が進み、年金不安が深刻。お金が心もとない状態で老後に突入すれば、現役時代と違って定期収入を獲得しづらいため、誰しもがスーパープアに転落しかねません。